明石です

リゾートバイトの明石ですのレビュー・感想・評価

リゾートバイト(2023年製作の映画)
5.0
リゾートバイトに応募し、離島へやってきた大学生三人が、バイト先の旅館で「禁后」と書かれた鏡台の抽斗を開けて呪われ、八尺様に魅入られてしまう!!

一応怪談好きなので、リゾートバイト自体は何度か聞いたことがあった。オリジナルではたしか、大学生の男三人だったのが、イケメン+美女二人になり、そこへ芸人並みに面白い地元の中年男ひとりを加えた四人で真夏の旅館バイトに励むという、映画映えのする設定に。と思いきや、設定どころか、中盤以降のすべての展開がオリジナルとは異なり、良い意味で複数の怪談をぶっ込んだトンデモない内容になってました。こういう映画が観たかったんだよなあ、という最高に粋なホラー、、というか、八尺様恋愛バトル映画でした。

ホラー映画にこそ何気ない日常の描写は必要だとつねづね書き続けてる私ですが、本作は日常の描写が徹底されてる。ああそういう大学生活送りたかったなあ、と思わせられるレベルの爽やかさ、からの転落、そして再度爽やか、からの大転落。なぜだかJホラーの作り手には、この監督は映画以外の世界知らんのか、と突っ込みたくなるような非日常ばかりが溢れている中(本当になぜなんだろう)、この監督さんは、映画の外でも、素敵な人生を送ってるんやろなあと感じさせる、満ち足りた日常描写に溢れ、また、良い意味でホラー作家らしからぬユーモアセンスも光る。前作『きさらぎ駅』で唯一といっていいほど気になった、登場人物の内面が型にハマりすぎてて「生きてる」感じが全くしないこと、を最新作でこうも綺麗に払拭されると、さすがにファンにならざるをえない、、

表向きの設定は「リゾートバイト」がメインながら、中盤以降は「パンドラ(禁后)」が合わさり、さらには「八尺様」までお目見え。隠し立てなんて一切せず、怪談界の有名どころをまるっと合わせる潔さに驚く笑。物語の大筋を真面目に書くとこんな感じ。リゾートバイトで旅館にやってきた大学生が、「禁后」と書かれた鏡台の抽斗を開けて呪われ、幽霊が見えるようになる。その幽霊は、『ザ·チャイルド』さながら常時子供の姿をしていて、『イット·フォローズ』さながら、呪われた人間だけに見え、つねに歩いてこちらに向かってくる。もちろん捕まるとヤヴァイらしい。

他作品や別怪談からの流用といえば流用なのだけど、この監督は、複数の話を有機的に繋げるのが絶妙だなと思う。唐突に出てくる話(八尺様とか禁后とか)と、前半に敷かれていた伏線の回収が交互に起こるので、新しい設定を急にぶっ込んできたという感じがしない。後半、除霊のために力のある和尚様が出てきてからは、「魂を取り戻す」べく、男女の体が入れ替わる。恋愛映画か!と突っ込む暇もなく本当に恋愛映画になり、八尺様とカーチェイス&バトルを繰り広げ、最後は凄まじい負のカタルシスとともにエンディングを迎える。いやはや大興奮でした。とくに後半以降笑。

難点があるとしたら、効果音が大きすぎることですね。前作『きさらぎ駅』の時も思ったけど、この監督のジャンプスケアは、一般のホラー映画の基準と照らし合わせても、かなりうるさい部類だと思う。障子を開ける音や、廊下を歩く足音とかを誇張するのはわかる。でも、幽霊らしきものの視線が画面に映るとき等、本来はそこにないはずの音をわざわざ作って入れるタイプのジャンプスケアは本気で滅んでほしい。過剰な効果音頼りがなければ満点に近いに評価をつけてたのになあ、と思いつつ物語が後半に突入すると、もはやそんなこと忘れるくらい良質で超展開なストーリーに、やっぱり満点評価をつけてしまうのでした。

景色は美しいし人間関係は羨ましいし、和尚様と体が入れ替わった後の主人公は気高く美しいしで、最高の映画でした。しかも「お馬鹿映画」と呼ばせないくらいシリアスな面もあるという(とくにラストの後味)。ホラー→恋愛、アクション→人怖という急展開が、びっくりするほど綺麗にまとまっていて、さらには、安易なハッピーエンドを許さず、伏線をすべて繋げた上で、ちゃっかりホラー!なラストに落ち着く。やりたいこと全部やってるのにちゃんと面白いの凄いと思う。この監督はこれからも推し監督やろなあ。

観終えたあとでゆっくりと余韻に浸りたい、できれば、誰かを誘って2回目観に行きたい種類の映画でした。あ、そいえば難点あった。イオン·エンタテインメントの配給だからか、イオンの映画館でしか観れないところが唯一にして最大の微妙な点かも笑。京都駅前のイオンは、ものすごく人を誘いづらい立地なのです、京都に限ったことじゃないかもだけど笑。こういう映画こそ、ミニシアターでしれっと何回か観たい。
明石です

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