明石ですさんの映画レビュー・感想・評価

明石です

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悪人(2010年製作の映画)

4.8

「光代とおると苦しか。一緒におればおるほど苦しゅうなる。俺、今まで、生きとるかも死んどるかもよう分からんかった」

21歳の保険外交員(満島ひかり)が深夜の峠で殺害され、容疑者として二人の男の名前が上
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Summer of 85(2020年製作の映画)

4.0

「俺と君、どちらかが先に死んだら、残された方は墓の上で踊るんだ」

「理想の親友」の死後、彼との違いを守り、墓の上で踊って裁かれた少年のお話。美しさとグロテスクの混在という私が個人的に一番好きなタイプ
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波紋(2023年製作の映画)

4.3

耳を聾する夫の鼾、放射能に汚染されている(かもしれない)水、晴れない空、寝たきりの義父、歳とともに硬くなってゆく踵。更年期の不幸をさまざまな角度から切り取って差し出し、そして広がる波紋、と話を運んで行>>続きを読む

めがね(2007年製作の映画)

4.2

「地球なんて無くなってしまえばいいのに、って思ってました。ここに来るまでは」

荻上直子の映画の食事シーンは、「うんめえ!」という感じではなく、「お、意外といけんじゃん」みたいな顔して、内心で滅茶苦茶
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ブレイド(1998年製作の映画)

5.0

「銃を買うといい。日光に敏感になったり、どれだけ水を飲んでも喉が渇くようになったら、自分を撃つといい。変身するよりマシだ」

記念すべきマーベル映画の一作目。なのに影が薄いブレイド、、わたしが子供の頃
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かもめ食堂(2005年製作の映画)

5.0

荻上直子の映画が大好きなんだぜ。

おにぎりとシャケと豚カツを看板メニューに据えた食堂をフィンランドのヘルシンキに出店した日本人女性(小林聡美)。土地に馴染まない日本食に客がまったく入らない中、自分の
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川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)

5.0

刑務所生活を終えて海辺の町にやってきた無職の男。小さな工場で職を見つけ、アパートに入り、ほかの住人との交流を通して小さな幸せを見つけていく。海辺の町で営まれるなんてことない日常はその一コマ一コマが現実>>続きを読む

死の王(1989年製作の映画)

3.8

「無動機殺人者はポストモダニズムの殉教者である」

難解なアート映画の方面へ進化を遂げたユルグ·ブットゲライト死の三部作の3作目。前二作とストーリー上の繋がりはないけど、もちろん世界観や作り手の観念(
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ネクロマンティック2(1987年製作の映画)

4.7

通常の性癖を持てない人間の苦悩を描いたシリーズ2作目。題材はネクロフィリアだが、これはあらゆる特殊性癖に通ずる話である。1よりややシリアスで社会的な内容、そして1に劣らずショッキングなラスト。芸術らし>>続きを読む

自由の暴力 デジタルリマスター版(1974年製作の映画)

4.8

心根は綺麗だが、ストリートに育ったために品に乏しく教養もゼロの男が、宝くじで大金を手にし、ブルジョワ出身の男と付き合うようになるが、生活のすべてが彼とは異なり、所詮は宝くじに当たっただけの成り上がり者>>続きを読む

空飛ぶタイヤ(2018年製作の映画)

4.1

池井戸潤原作の映画を久々に観たぞ。大学生の頃はたくさん読んだ記憶がある。頑張って生きてる人たちは格好良いな、と思った。あと、娯楽はすべて作り手の側が用意してくれる作品は疲れなくていいなとも。

ラストマイル(2024年製作の映画)

4.8

う〜んこれは完璧なサスペンス映画。満島ひかりが色んな意味で満点でした。配達拠点?の倉庫の三階にオフィスがあるあの感じも滅茶苦茶好き、、二転三転するストーリーと完璧なサスペンスを紡ぎつつ社会問題も絡める>>続きを読む

昼顔(1967年製作の映画)

4.8

冷感症で夫との性交渉がままならず破局の危機に瀕していた年若い女性が、娼館で働き、さまざまな変態的嗜好を持つ客の相手をする中でマゾヒスティックな才能を開花させ、夫との愛を取り戻していくも、客の一人が彼女>>続きを読む

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

2.6

戦時中に日本兵が飢えに苦しみ仲間を殺して食べた事件の真相を解明すべく、戦後38年の月日を経て、その現場に立ち会ったかつての下っ端兵士、奥崎謙三が立ち上がる…!姿を追ったドキュメンタリー。

まずこの映
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O嬢の物語(1975年製作の映画)

3.6

自分を辱め、調教し、拷問する男に恋してしまう特殊性癖(と見せかけて正常な性癖)を持つO嬢の物語。

悪趣味で名高い文芸ソフトポルノ映画。ポーリーヌの原作はちょい読みで鑑賞、まあまあの過激さとまあまあの
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エマニエル夫人(1974年製作の映画)

3.7

「私が好きというのは、嫌いではないということ。愛してはいないの」

内に秘めた欲望を開花させ新たな性の喜びを知る旅に出る夫人エマニエルの物語。レズビアンの美女や還暦を超えた老紳士と、さまざまに相手を変
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女性上位時代(1968年製作の映画)

4.7

素晴らしい映画。何が素晴らしいって、徹頭徹尾ナンセンスなところですね。これはと決めた男を落とした主人公が、車の助手席で服を脱いで窓の外へ投げ捨てレディ·ゴディバのように素裸になったところを、ガソリンス>>続きを読む

愛に関する短いフィルム(1988年製作の映画)

5.0

覗きから始まる狂気的な純愛。

覗きが趣味の19歳の郵便局員が、望遠鏡で近くのマンションを覗いているうちに年上の美女に惚れてしまい、覗きを通じて彼女を本気で愛するようになる。彼女とキスしたいわけでも、
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殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)

5.0

二十歳を迎えたばかりの心優しい青年が人を殺し死刑に処されるまでの短い記録。

陰影が濃くまた過度に黄色味がかった映像に、死んだ猫を吊るした序盤のカット。この映画ハズレかも(画面の色味をいじり過ぎる作品
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ラルジャン(1983年製作の映画)

5.0

偽札を掴まされそれと知らずに使ったことで刑務所へ入れられ、子供が死に妻にも去られてしまう。そして殺人犯に身を落とす男。上流階級の人間が遊び半分で使った偽札が下層階級へ流れ、罪のない労働者を刑務所へ追い>>続きを読む

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)

3.5

ミケランジェロ·アントニオーニが監督、アラン·ドロンとモニカ·ヴィッティが主演、これは名作にしかならんと思い観て肩透かしを喰らった記憶。アラン·ドロンは終始忙しなくモニカ·ヴィッティは真意の見えないア>>続きを読む

美しいひと(2008年製作の映画)

3.8

なんてことない高校生の日常が、常軌を逸して美しいミステリアスな美女の転校により急展開を見せる。『クレーヴの奥方』の映像化というタテマテになってますが、魅惑の男性教師ヌムールに原作のヌムール公と同じ名前>>続きを読む

地下室のメロディー(1963年製作の映画)

4.3

「夕食が一緒でも、朝食が別々じゃつまらない」

ああなんてスタイリッシュ。レオ·ディカプリオの『キャッチミーイフユーキャン』を観て以来の衝撃。こんなクールな犯罪映画があったなんて。まああるだろうけど。
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太陽がいっぱい(1960年製作の映画)

5.0

冒頭の青い目のアップでこの映画はアラン·ドロンの映画であり彼が世界の中心であることを観客に分からせ、事実、物語はそのように進行していく。そして欲得にのみ従って人を殺してカネを奪い、追い詰められていく彼>>続きを読む

ライリーの初デート?(2015年製作の映画)

3.6

娘が初めて男の子を家に連れてきて、両親の頭の中では感情たちが大忙しで仕事を始める。インサイド·ヘッドって、感情の擬人化というこのアイデアで無限にメシが食えた(イヤらしい言い方だけど笑)はずなのに、「2>>続きを読む

インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)

4.2

産まれてから物心つくまで幸せを絵に描いたような毎日を送っていた少女が、親の引っ越しで故郷を出て都会へ移り住むことになる。彼女の頭の中では色んな感情がひとときも休むことなく仕事をしていた。「ヨロコビ」や>>続きを読む

女ともだち(1983年製作の映画)

3.5

フランス映画版『ソフィーの選択』

ナチのホロコーストを生き延びた二人の女性が戦後に出会い友情を築く。「幸福な家庭は似通ったものだが、不幸な家庭はそれぞれ異なっている」というトルストイの有名な一文を映
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MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

2.8

ド級に気取ったホラー映画。でもその気取りは鑑賞者のためのものではなく、徹頭徹尾作り手のためのもので、観通すのにかなりの苦痛を強いられる。アーティスト気取りの映画作家が売れ線を狙ってジャンルムービーに擦>>続きを読む