【STILL とは、彼が生涯欲してもまだ得られていないもの】
幼少期、とにかく走り回って2歳にして駄菓子屋まで駆け込む彼の行動にSTILLはなかった。
全盛期、ドラマと映画の撮影を掛け持ちする毎日でろくに睡眠や食事もとれない生活においてはそこにもSTILL はなかった。
発症後、左手の小指から始まった振戦は徐々に広がっていき治療薬の影響であろう不随意運動にも悩まされた彼の身体にSTILL はなくなった。
彼が得られなかった、失ったものの象徴となっているSTILLをタイトルに持ってきたセンスに思わず唸ってしまう。
震える左手を悟られないよう、演技中は常に左手に物を持って操る動作によってマスクしていた映像の数々には驚嘆しかない。
心境を出演作のシーン切り取りで巧みに表現し、容赦ないツッコミのあるインタビューも効いていた。
今は疾病への支援に奔走している彼の人生にはどうやら最後までSTILLは訪れないようだ。
それでこそマイケル・J・フォックスなのだから、それでいい。
まだ(STILL)彼は走り続けるのだから。