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抱擁のかけらのmiporingoのレビュー・感想・評価

抱擁のかけら(2009年製作の映画)
3.8
愛は一筋縄ではいかないという映画。ペネロペ・クルスはアルモドバル監督のミューズでいくつもの作品に出ているらしいのだけれど、わたしは『ボルベール』に続き二作目鑑賞。ヘップバーンみたいなビジュアルのペネロペは、女優として主人公マテオの監督作品に出るときの姿で、この映画自体、回想と劇中劇とエルネストの撮る動画が錯綜する。ペネロペは美しいし露出時間も長いのだけれど作中においてあまり主体性を持たず、その分、脇のジュディットの感情が深く描かれていると思った。お化粧をする時間が無かったと言い訳しながら疲れ果てた顔で息子を抱擁する地味なビジュアルのジュディットは、美しく華やかなペネロペ演じるレナの真逆をいくかたちでマテオを愛する。レナの愛は激しく求めるもので、ジュディットは陰で支えるそれである。レナの死後、視力を失ったマテオを介添するジュディットに深い愛情を見る一方で、最期まで観終わった後に回想するに、ああ、あれはストレートな愛だけではなくて彼を裏切った罪悪感とやっと自分一人のものになったという安堵など複雑な思いがあってのシーンだったんだということに思い当たり、もう一度観たくなる。
エルネストの息子が撮った、レナとマテオの最後のキスシーンが粗い粒子のアップで印象的。眼の見えないマテオがその映像に手で触れながら愛するレナを感じているところで目頭が熱くなってしまった。
ところでホテルのゴミ箱に残されたバラバラに千切られた写真は、誰の仕業なの?
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