HiROMI

花腐しのHiROMIのネタバレレビュー・内容・結末

花腐し(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

花腐しは忘れられない映画。

脚本は書き換えられても、人生はやり直せない、のだろうか。
やり直すことはできなくとも、未来は変えられると私は思う。横にふたり並んで歌ったことで、挧谷の未来は色づくことができると私は思う。だってまさに愛の熱唱だったもの。

*************

腐りつつあったのは栩谷だけじゃなかった。
きっと祥子だって腐りつつあったのだ。
女優になる夢はかなわず、子供を産んで、家族をつくることも拒否されて。
誰かになろうとしたわけじゃない、伊関が挧谷の写し鏡だったように、祥子には自分を映してくれるものさえなかった。
夢破れ、自分のことしか考えていなかった男たちは、祥子の深い絶望に気付いていなかったのだ。
だから、祥子は挧谷から去り、傍にいてくれた桑山と心中したのではないかと思う。

最後に挧谷が脚本を書き換える。
一夜を過ごした男の名前を告白する祥子を挧谷は抱きしめ、くちびるを重ねる。
こんなにも愛している、とやっと認めることができた。祥子と向き合った。孤独を知り、やっと受け入れた。

脚本は書き換えられても、人生はやり直せないのか。
夢破れたことや愛するひとを悲しませたこと、後悔や挫折、それは変わらない。
死んだ人も生き返らない。

それでも、過去を振り返り自分の本当の想いを知ることで、過去の記憶を愛し愛された記憶に書き換えることができれば、そこから始まる未来は変えられる、と私は思う。
だからこそ、最後に挧谷が見たものは挧谷のもとに戻ってきた微笑む祥子だった、と私は思う。
祥子はいないけれど、挧谷の毎日に少しずつ色が戻ってくる。そう、信じたい。

PS:性的シーンは必要なものだったと思う。最後のシーンを除いては。あれはあまりにただのピンク映画。あまりに男目線。長すぎる。辟易。だいたいあんな声は出さないよ。男はかくもバカバカしいということか。
HiROMI

HiROMI