ありそうでなかった戦国時代の描き方。それぞれの人物像はところどころ目新しさがあるものの、本能寺の変自体はそれほど新解釈感はない。信長の首が見つからなかった謎についての描写は割としっくりくるものだった気がする。同じく信長周りを描いたレジェンド&バタフライとは似ても似つかないが、こういう別のアプローチで表現だれた作品を短期間で観る機会があるというのも面白い。
会話のテンポや随所にあるブラックユーモアによってコントを見ているような錯覚に陥る。特に北野武監督自身が演じる秀吉と浅野さんの黒田官兵衛、大森南朋さんの秀長とのやり取りはまさにお笑いの雰囲気を纏っている。他の俳優陣もみんな楽しそうに演じているように見えたし、そのキャスティングも盤石の布陣で、満足度は高い。副島さんもめちゃくちゃハマり役で笑った。
これだけのベテランを抱えて独特なちょっとした間であったり、表情であったり、なかなかにバイオレンスでグロテスクなシーンがあるにもかかわらず、こういうコメディ的な演出ができるのは北野監督のセンスだなあと。
ただ全編を通して盛り上がりに欠けていて、退屈さこそないにせよ、面白かったなあ！と思うことも、観終わった後の余韻もあまりなかったかな。普段セリフを聞き取りづらく感じることは少ないけど、今作はちょこちょこ何を言っているのかわからないシーンがあった。それも関係しているのかもしれない。
あとは何だろう。予告映像の時点から思っていたのは、信長と光秀がえらく若く見えるってこと。明智は信長より歳上だからここ2人の容姿自体はまあまあこんなもんかって感じだけど、秀吉も実は同世代だし、家康は10歳ぐらい歳下だしで結構違和感があった。それ以外は概ねまとまっていて面白かったな。
177/2023
