一番思い出したのは『御法度』。松田龍平＝ファ（オ）ム・ファタルの不在は、マッチョに権力を志向し続ける武士達は破滅に値する運命すら持ち合わせていないことの証となる。
初期作から一貫して自分が「殿」であることに対する気恥ずかしさや違和感を婉曲的に表現していた武が、信長をはっきりとセクシュアルな意味も込めながら、相手（同性の男たち）を制圧する横暴な人間として描く。
『アウトレイジ』の銃器描写はリアリティが軽くて新鮮味も少ないとよく指摘されているけど、拳銃以前の時代劇の殺傷描写は思いの外説得力があって戦の虚しさと画面の魅力が両立されていた。
最初から最後まで陰鬱だった『アウトレイジ最終章』の次にこれを撮れちゃう凄さ。まだまだ新作作ってくれよなー。
