特売小説

テノール! 人生はハーモニーの特売小説のレビュー・感想・評価

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持たざるものが己が才覚を握り締めた拳一つで権威主義者に立ち向かい奴らの鼻を明かす痛快逆転劇だぜきゃおら、と思い臨んだら充分に恵まれた環境下に在って足るを知れない甘ちゃんな主人公こそが権威におもねり見とうもないくらい涎を垂らして腹を見せまくる犬ころ野郎でした、ていう。

メンターのおばちゃんの方が余っ程主人公らしいエピソード持ってんな、ていう。

いやさ、家族の絆だの地元のツレだので泣かそうとしてくる物語に対し馬鹿にすんなと大概拒否反応の出るあてくしでは御座いますけれども、本作ほど御都合主義的にそれらを軽視する物語に逆説的に悪意を見出してコミットしようなんて気も更々起きませんよ。

そも、主人公がオペラに感動する理由が、何故ならオペラだから、という乱暴な節回しに見えますからして、然るにそれ以前に彼がラップを自らの表現欲、もしくは承認欲求の発露として選択した必然性も失われちゃうじゃないですか。

なんかもう、ほんともう適当に過ぎる物語。

こんなもんで感動出来る馬鹿がいると思うなど、あんま観客を舐めん方がいいすよ本当に、と。
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