まや

こいびとのみつけかたのまやのネタバレレビュー・内容・結末

こいびとのみつけかた(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『まともじゃないのは君も一緒』が大好きだったのでとても楽しみにしていたが後半から全然乗り切れなくて正直面白くなかった。

まず、冒頭にこれはメロドラマですと前提が示される。しかし、前半どう見ても人から理解されないという共通点を持つ2人の恋愛が始まるようなワクワクした気持ちだった。だからどこがメロドラマなのか?ととても疑問に思っていたが後半その真実が明かされる。ここからすごくガッカリだった。正直着地点も生温くて残念だった。ずっといやいやいやいやという気持ちのまま終わってしまった。

主人公の台詞が前半からとても多い。世間の情勢を日々考えるために、記事の切り抜きを待って、常に何か話している、という主人公。これで変な人だというキャラクター設定がなされているが、その変な感じもそこまで変な感じがしなかった。まともな人が考えた変な人の像という感じが強くした。本当に変なら周りの人も敬遠するのに何故か主人公の周りは優しい人で溢れている。

これはヒロインにも感じた。そこまで変だったら友達もいないように思う。昔モデルやっていたという設定も可愛い女の子連れてくるためだけのように思えて必要かなと思った。また、この友達たちが普通に嫌な感じがして、変でも本当に好きで友達だったらあんな会話にならない気がする。終始お互い貶し合っていただけで、でもここが良いところだよとか、仲の良い感じがまるでなかったのに違和感を感じた。

ただ変人の2人が惹かれ合う様は見ていて素敵だと思ったし、この変な人という価値観はお互いの価値観を表層化してわかりやすくしているように思えた。だけど、終始2人の関係は曖昧でまた、それぞれの人間像もあまり語られなくて気になっていた。

後半、主人公の家がないというところから少し雰囲気が変わってくる。ここで家もなくて、親もいない孤独を抱えた2人の物語として割と重めなテーマなのかと思ったが全然違くてがっかりした。

途中のヒロインの歌も生きづらさを歌っていて、みんな同じがいい、つまらないのがいいみたいな、世間に中指たてる系の歌だった。だが個人的に確かに本当に嫌な世の中ではあるが、自分がそれをどう捉えるか、世界をどう見るかということだと思っている。それは、自分の大好きな映画達から教わったことだ。だから、世の中がつまらないと叫んでいるのには納得いかなかったし、モヤモヤした。(何故か人のせいな感じがして、自分でつまらなくしているだけではと思ってしまった)

また、ここから突如、主人公の家族の話や怒るとそれが尋常じゃないくらい怖くなるというキャラクターの背景がなされる。(これにより、私は主人公が両親を殺しているのかと思ったが全然そんなことなかった。この説明その後に効いていないのでいるのか?と思った)

主人公が同僚の人をぶっ殺したいと言っているのにヒロインが笑っていて、2人で少しずつおかしくなる話かと思った。どうしたら怒るのかとか、何を言ったら怒るのかをヒロインが聞くから、このヒロインは世の中が嫌でこの主人公に殺されたいのかと見ていて思ったが全然違かった。

そして、真実が明かされる。ヒロインは既婚者だったのだ。家に帰るという。外車を持って大きな綺麗な家に住む旦那、おそらくかなりお金持ちだろう。家すらない主人公との対比が本当に酷だった。ここから冷めてしまった。何だこれってなってしまった。不倫もの好きではないから不倫の匂いがまるでしない分、油断してしまった。

ごめんなさいとヒロインが泣くが、は?としか思わなかった。人のこと傷つけてそこから逃げて何がしたいのだろうと思った。

散々自分は変人で人から理解されなくて、世の中がつまらなくてと言っていたのに、自分は世間の普通そのものだから説得感がまるでない。

本当にこういう人が私は嫌いだ。自分の辛さを人に縋って、その人がどう傷つこうと自分の辛さが和らげばいいとしか考えていない。旦那さんも傷つけ、主人公も傷つけ、理由が死産。(ここも結婚して子供産む世間の流れに乗ってるじゃんとしか思わなくてモヤモヤしたし、死産を乗り越える辛い時に世の中がつまらないとは?となった)どんなに辛くても人を利用するだけ利用するのは最低だと思う。

別居の理由を聞くシーンのヒロインの友達の一言もなんて酷いんだ。「自分だけ辛そうな顔すんな」というセリフ。信じられないなと思った。傷ついている人に対してこんな酷い言葉かける神経が信じられないし、ヒロインが結婚しているの黙っている理由もほんと他人事。全体的に出てくる女性像が全員酷くてがっかりした。(嫌いなタイプの人しか出てこなかった。自分の好きな作品は基本的に女性像がリアルだったり好きだったりするものが多いから、そこもハマらない理由な気がする)

最後の着地点もぬる過ぎる。話がしたいからこれからも旦那さんと一緒でもいいから会いたい。なんだそれって感じた。旦那さんも主人公もそれは辛くないのかなと思ったし、何故また人が傷つく方向に行くのか良くわからなかった。(理解ある旦那すぎないか?また、死産のことは旦那と向き合うべきなのにそこは触れられずモヤモヤした)話すことが大切みたいに最後談笑するが全然その大切さはわからない。何故ならそこが今まで伝わってきていないから。

主人公の歌で終わるがそれも自分のことを歌っていて、ヒロインの誕生日のプレゼントなのに何故自分の歌?と思ったし、健気過ぎる主人公にも理解ができなかった。こんな酷い仕打ち受けたのにまだ関係を続けるのか、そこまで好きなのも伝わらなくて?しかなかった。

思ってた方向と面白くなりそうな感じがあったのにことごとく裏切られて、自分の嫌いなタイプの物語となってしまっていた。人物の掘り下げとか、伝えたいテーマとかあやふやで全て浅くて乗り切れなかった。とても楽しみにしていた分、残念だった。

ただ、主人公の俳優さんの目が美しかった。泣く前の目にいっぱい涙が溜まっているのがすごく良かった。
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