このレビューはネタバレを含みます
偶然や出来心が重なって織り成される世界そのものを見たような気がする。
希がずっと夏彦が逃げ出しそうなことに気づいていたのが苦しい。
臆病で、ずるくて、幼くて、愛おしい。
一緒にいられるだけで良いという幼い考えで、きっとあの頃の希には夏彦が世界のすべてだったんだろうな、と。
彼女は最期も夏彦を呼んでいたのだろうか、それとも電話口で呼ぶのが最後だったのだろうか、わたしたちの知らないところで、夏彦は希の最期を知っている。
フェス当日だからって天気は快晴じゃないし、申請出してないと止められるし、綺麗な花束を用意したからって届くとは限らないし、人生がもう一度変わるかもしれない奇跡の歌声が響く会場に夏彦はいない。
奇跡は起きなくて、幸せは簡単には掴めなくて、けれどそのとんでもなく残酷な世界には『あなた』がいて。
明るく背中を押したり、笑わせてくれたり、元気が出るような映画ではないけれど、
わたしをこの世界の一員にしてくれる。
一緒にただ綺麗なだけではない美しい世界を踠いてくれるんだと、そういう彼らのお話。