くさむすび

PERFECT DAYSのくさむすびのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
今年見た映画の中で一番体感時間が短かった。あと何時間でも見ていたい。
清掃員の平山が主人公で、仕事がある日は"朝早く起き、カセットテープを聴きながら出勤。渋谷のトイレを清掃しながら周り、終業後は銭湯に行き、浅草の地下街で呑み、家に帰って本を読んで就寝"。仕事のない日は"コインランドリーに行き、写真屋に行って、古本屋に行き、行きつけの居酒屋に行く"というルーティーンが幹となっている。そこから繋がる枝葉のように、タカシとCDショップに行ったり、ニコが家に来たり、三浦友和演じる男と会ったりなど、同じような日常の中でも平山の感情を揺れ動かすような出来事が+αで起こっていく。その+αこそ人生なのではないかと今作を見て思った。細やかな感情の動きでも、壮大なもののように感じさせる。でもその喜怒哀楽を際立たせるのは変わり映えのしない日常があるからで、その描き方が今作は素晴らしい。
平山が「今度は今度、今は今」という台詞を言うシーンがある。今作の中で彼の過去は大々的に描かれないのは、この台詞に呼応しているからではないだろうか。とりあえず、今に目を向けて生きてみようと思える。
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