かこじ

PERFECT DAYSのかこじのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
公開二日目の土曜。
カンヌ男優賞の影響か、役所広司の人気のためか、劇場は半分以上埋まる盛況ぶり。
年配の方が大半。役所広司恐るべし。

私はトイレが近いので、トイレ大好き人間だ。
普段の映画館や居酒屋のチェックは欠かさない。
なので、日本のウォシュレットは世界一だと思っているし、TOTO持ち込み企画の本作を観ないわけがない。

ヴィム・ヴェンダース作品は、学生の頃、『ベルリン天使の歌』をトライしたが、途中で寝た。
それ以来苦手で、「どうせ延々と独白が続くんだろう」のつもりで鑑賞。

結果、大変面白かった。
役所広司が黙々と、公衆トイレ掃除をこなす。
まるで『ウィリーズワンダーランド』のニコラス・ケイジのよう。

この公衆トイレは、映画でないとお目にかかれないような、都内のハイソな高級トイレ。
車の駐車場所、掃除道具の扱い、掃除の仕方まで、細かい描写が新鮮で、ずっと観ていられる。

清掃人に対する一般人の差別的な態度など、社会風刺をチラッと覗かせるものの、焦点は役所広司の生活様式。
質素ながらも、毎日のルーチンワーク、掃除を嬉々としてこなす。

一見、孤独そうだけど、常連の居酒屋、風呂、古本屋での交流もある。
実際、この軽い交流すらできない孤独な人は多い。

タイトル曲『パーフェクトデイズ』が歌う通り、何でもないような日々の繰り返しが本当の幸せなのだろう。
まるで役所広司の名作『すばらしき世界』の続編のよう。
終盤、カセットテープを聞きながら彼が涙を流したのは、孤独だからではなく、幸せを噛みしめているからだと思う。

そういえば、『トレインスポッティング』でユアン・マクレガーがトイレダイブしたときに、「パーフェクトデイズ」の曲が流れてたような。
あれは映画史上、最低の汚いトイレだった。
かこじ

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