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PERFECT DAYSのIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8
ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが東京を舞台に役所広司で映画を撮った、という事で、「観る」以外の選択肢はないのです。休日「待ってました!」と慌ててレイトショーへ。とても面白かった。馴染みのある東京の景色と役所広司と素敵な音楽。東京にはスカイツリーのような日本の近代を代表する建築物だけでなく、昔からなんとか生きながらえている銭湯や古本屋もある。人間も同様なのかも知れませんね〜(適当に言ってますけど)。
渋谷区の公衆トイレ、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトはこの映画で知りまして、映画鑑賞後ググってみると、安藤忠雄や隈研吾や佐藤可士和などなど錚々たるクリエイター達による公衆トイレでビビる。映画にも出てくる建築家・坂茂による「ザ トウメイ トウキョウ トイレット」は観光目線で行ってみたい。その他浅草や隅田川近辺のロケーションも良かったです。ハリウッド映画のような胡散臭い東京は一切無くて、割と見慣れた東京の景色まんまなのでヴィム・ヴェンダースの映画であることを忘れそうになりますが、そこは音楽が。
役所広司演じる平山が仕事に向かう車内で聴く音楽がすごく良かった!選曲が素晴らしい。ヴィム・ヴェンダース自身の選曲だそうだ。個人的には久々にヴェルヴェット・アンダーグラウンドの“Pale Blue Eyes”を聴いてテンション上がった。劇中の平山の姪っ子が「ニコ」という名前なのは絶対そういうことであろうから「ひょっとしたらもう一曲くらいヴェルヴェット・アンダーグラウンド来るか」と期待したが来なかった。鑑賞後にYouTubeで数曲聴いた。世の中便利。
ちなみにですが、レコードジャケットがアンディ・ウォーホルのバナナで有名なヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバムはウォーホルがプロデュースしていて、ウォーホルのゴリ押しで「ニコ」をメンバーに加えて「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」としてデビューしている。その数年後ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの中心人物だったルー・リードはソロデビューし、2枚目のアルバム『トランスフォーマー』にて映画内でも使用されている楽曲“パーフェクト・デイ”を収録。お察しの通り映画のタイトルは『パーフェクト・デイズ』であるように、「ヴィム・ヴェンダースはルー・リード好きだよね〜」って思いつつ、この楽曲“パーフェクト・デイ”はデビッド・ボウイもプロデュースしてるようで、デビッド・ボウイといえば映画『バスキア』でウォーホルを演じていて、その時は「ハマり役!(笑)」とちょっとわろてもた訳ですが、なんか今の私の話ごっちゃごっちゃ。後半映画とあんま関係ないし。なんか感想でもないし。訳分からんし。もっとシンプルに。必要最低限。「ミニマリスト」で。
ということで、もし私が若い頃にこの映画を観たとしたら「貧乏なジジィの映画か。つまらん!」と一蹴したかもしれない。それがそれなりの年齢になると映画の見方も変化して、今やこういう映画もとても面白いと思う訳です。詩的で情緒的。大事件は起こらないが、東京の日常と非日常を感じることができて、生き方には色々あるなあと考えさせられる。あ、生き方というよりは人生の楽しみ方といったところか。映画の最後は『バニシング・ポイント』なんですかね?各々で解釈必要。あと、エンドロールは最後まで観た方が良いです。
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