カステラちゃん

PERFECT DAYSのカステラちゃんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.4
昨夜は重たい気持ちになった。ガザ難民キャンプのリポート番組において、人々の日常が消滅する残酷さを見せつけられたからだ。
一夜明け、平山さんの黙々と繰り返されるルーティンに、なんだかありがたい気持ちになった。友だちの木からは、ひこばえをいただき窓辺で育てる。銭湯で湯に浸かってはぁーっと息をつく。工夫した道具で真摯に仕事に向かう。
でも、台所の隅にはゴルフバッグがしまわれ、「住む世界が違う」という人との再会もあったり、彼の"今"は少しずつ変わっていく。役所広司の語らない演技が、観客に一人の男性の内面と歴史を豊かに想像させてくれる。
「便所掃除」という詩を思い出す。この職に就いた当初はトイレを美しくして己れの心を浄化したかったのかもしれない。