映画人間

PERFECT DAYSの映画人間のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.9
何気ない、でも確かにそこに生きている、一人東京で暮らす男性の姿がそこにあった。大きな出来事の起こらない話だが、主人公の男性を役所広司が見事に演じている。そして、その生き様をヴィム・ヴェンダース監督がありのままに映しつつも、どこか美しさと儚さを感じさせる映像とストーリー構成されており、懐かしさを背負いながらも今までに観たことの無い作品へと仕上げていた。朝起きて、身支度をして、車で通勤をして、銭湯に行き、いつもの居酒屋で一杯やる、そんなルーティンな生活を送る主人公は、傍から見たら退屈な人生に映るかもしれないが、情報が溢れ、スピード感の求められる現代において、ある意味浮世離れした存在である。結婚をせず、仕事にひたむきで、あまり余計なことは喋らず、スマホも持っていない。実際に下町に存在してそうな人物でもあるが、実際は電通クリエイターが作り上げた虚像の人物である。だがしかし、日本の様式美を兼ね備えた人物のようにも思えた。ドイツの監督が知りもしない日本という国を、ユニクロと電通からの依頼で作った薄っぺらい作品という見方もできるし、私自身もそのように思う側面もあるが、何だか心地良い時間だったなと思える不思議な映画だった。主人公が役所広司さんでなければ、きっと観られないクオリティーになっていただろう。
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