猛毒のサイラス

PERFECT DAYSの猛毒のサイラスのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.6
完璧な日々とは

数学的な『完全』とか、『完璧に』といった考え方にはとても整頓されたものを感じる。平山はそんな男であるだろう。ただこの映画でキーとなるのは光と影である。平山は影の世界にいるから完璧に近い生活を送れる、と言うより結果として完璧な世界となっていると言うほうが正しい気がする。外界の光の世界を排除し、無口に、流行や技術を受け入れない、平山が走る反対側の車線では車は大混雑である。物や要素が少なければそれらを整頓することは容易いことである。そんな“影”としての完璧な世界にほんの少しを光が差し込む。その光に平山は葛藤する。自分の完璧を崩すことになる、そんな光は無感情な日々を彩ってくれる。しかし、一方で平山はその光を遮りたいとも思ってしまう。木を育てて光を遮る。直接、光を浴びることなんてできない、木漏れ日だけが平山の光である。

冒頭のシーンから、自分がこの生活なら不意に突然泣き出してしまう、と感じた。その考えがそのままオチに使われていた。平山の人生には彩りがない、しかし平山はそんな人生を求めている。しかし、求めてしまってはそれはそれで完璧でない気もする。なので、私は完璧な人生は送れないと思う。結果的にそうならなければいけないのだろう。そんな世界は妙に苦しく感じる。

夢だけは誰にも制御できない。本当のperfect daysなんて存在しないのかもしれない。
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