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PERFECT DAYSのたのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

この映画には光と影の両方の側面があるように感じた。
光の側面は、同じようなことを繰り返す日々のなかに現れる木漏れ日のような一瞬そして刹那的な幸せがあるからこそどんな日も特別である「PERFECT DAYS」なんだと感じられるという点であろう。また、身近な人との関わりのなかで完結できる人生というのがどれほど愛おしいものかというのも感じた。行きなじみの飲み屋や銭湯、写真屋など自分を知っている他者が変わらずにそこにいるということは今の時代ではもはや幻なのかもしれない。スカイツリーのカットが随所にあったのは、上(という名の世界や社会)ばかり見ていると足元にある大切なものに気づけなくなるという警鐘なのかなと勝手に解釈もした。スマホの画面越しではなく、目の前にいる相手とのかかわりを大事にしたいと思わされた。
しかし影の側面も感じざるを得なかった。それはすごく「金」のにおいがするきな臭さであった。なんといっても東京の公衆トイレの描写である。一般的に思い浮かべる公衆トイレ像とは異なり、今時のデザインを施されたおしゃれなものがよく登場していた。企業からの資本があったということもあり、「日本のトイレはきれいなんだ」という宣伝要素を感じた。また主人公がもともと金持ちの家元出身だと後半で分かってから、物語の見方が変わった。うがった見方ではあるが、今の仕事で生活できなくなっても大丈夫だなと思ってしまった。高齢者が余生を楽しむために仕事をしているというとらえ方もしてしまった。高齢になっても働く社会は果たしてPERFECTなのか…
しかしながら、役所広司をはじめ演技派の俳優の絶妙な芝居は非常に楽しむことができた。こうした邦画がより広まるきっかけになれば、まだいいかなと思う。
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