好きな点と好きじゃない点が多い映画だった。役所広司の所作や表情と東京の風景を組み合わせるだけで、味わい深い映画が成立することを証明したのだから、THE TOKYO TOILETも大したものである。
しかし、THE TOKYO TOILETのプロパガンダ映画とはいえ、本作で描かれるトイレは綺麗過ぎる。スクリーンで汚いトイレを観たい訳ではないが、リアリティ不足だし、トイレ清掃の仕事の大変さが感じられない。
役所広司が演じる主人公の平山は、村上春樹の小説の主人公みたいだった。規則正しい生活をして、身なりを整えて、アナログな本や音楽を楽しむ。そこまでは良いのだが、中年男性がカセットテープで音楽を聴かせただけで、若い女性からほっぺにキスされるなんて、不自然だし、あまりにもご都合主義だ。
けれども、銭湯の場面や、三浦友和とのやり取りなどは、とても良かった。文句は色々あるけど、嫌いにはなれない映画だと思う。