リク

PERFECT DAYSのリクのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」

私の好きな写真家の言葉。
平山にとっての神秘的なことも日々移ろいゆく身近な世界なんだろう。
植物にあてているライトの紫色、窓の外の深い青緑、昼食をとりながら眺める景色は鮮やかな黄緑。彼の日常はとても鮮やか。
作中で色がなくなるのは夢の中と写真だけ。
彼にとって鮮やかに輝いているのは今。

一見変わらない日常のようだが、何年も撮り続け押し入れに貯めた写真や毎日ひとつ進む“まるばつゲーム”今日のホームレスのおじさん、木々の揺れ、毎日水をやって少しずつ成長していく植物たち。
日々の些細な変化を楽しんでいる様に見えた。



好きなもの、身長、その時の気持ち、年齢、誰といるか。
同じ場所でも、その時の状況や人によって見えるもの、見ているものが違うのだろうなとたまに考える事がある。
トイレを使う人が来て外に出た時、窓から外を眺めている時、車を運転している時。
スクリーンのこちら側の私たちに平山が何を見ているか提示されない。
ささやかに微笑む彼の潤んだ目にはどんな綺麗な世界が映っていたんだろうか。

人は見たいものしか見ない。

きっとホームレスのおじさんや、彼のことは公園にいる人には見えていない。
浅草駅改札の横にある居酒屋は急いで改札を通る人には見えていない。
きちんと見れば日常はこんなに輝いてるのに。

彼が姪に言った「世界が違う」とはそういう事なのではないだろうか。
「世界が違う」≒「視点が違う」



鑑賞前はてっきり『パターソン』のような映画だと思っていた。
『パターソン』自体とても好きな映画なので、本作にもとても期待していたが似て非なるものだったように思う。
(言わずもがな本作も大切な一本になった)

日々を淡々と映している部分は同じだが『パターソン』は変わらない日々を楽しむ、日常がそこにあることの喜び。
本作は日々の中の些細な変化を楽しむ、生きる事の喜びを撮っていた。

「こんどはこんど、いまはいま」




私の大好き時な曲、『Feeling Good』が流れ、朝日に照らされながら運転する彼の正面のカットの長回しでこの作品は終わる。

まさに『Feeling Good』の歌詞にあるように
「新しい夜明け」を「新しい1日」を「私のための新しい人生」を楽しんでいる人の物語だった。




※あの浅草の地下の飲み屋行ってみたい

写真屋さんとのお互い「おう」で済むツーカーな感じ最高だった。
リク

リク