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PERFECT DAYSのもちのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
すごい作品を観てしまった。
こういう出会いがあるから、映画を観るのはやめられない。

刺激に溢れ、めまぐるしく変化する現代社会。
先が見通せず、足元が揺らぎそうになる不安な時代に、平山の生活は美しく映る。
平山のように、自分の仕事に真剣に取り組み、自分の物差しをちゃんと持ち、地に足をつけて生活できたなら。
そしてどんな時も空を見上げて、木漏れ日の美しさに気付ける心の豊かさと余裕を持てたなら。

しかし彼は、ただ単に穏やかで幸せな人間というわけではない。
たまに、意識的に笑顔を作っているようにも見えた。
大変だった日の翌朝。辛かった日の翌朝。玄関の扉をあけて、気を取り直すように空を見上げては笑みを浮かべる。

影の部分ではなく、意識的に光の部分を見るようにしている男なのだと感じた。
恐らく過去に何か大きな辛い出来事を経験しているが、彼はその辛さに浸ることはせず、日々希望を見つめる。
それが最後の表情に集約されているような気がして、あの3分間は鳥肌がたった。
役所広司の演技に震えがきた。
感情が込み上げて涙が止まらなくなった。

人生には時に恐ろしい出来事が起こる。
哀しみ、喪失感、絶望、恐怖に、苦しむことがある。
そんななかでも、この世界の美しさに目を向け希望を見つめ続ける平山の生き方に、心から感動した。
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