カレーライス

PERFECT DAYSのカレーライスのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
「毎日が同じことの繰り返し」、「変わらない毎日」て良くいうけど、もっと身近に起こる些細なことに目を向けてみると、幸せを感じる瞬間てたくさんあるのかなて思ったし、そういう視点を持っていると、毎日が同じだなんて思わないのかも知れない。
とは言っても、変わらない毎日に少し退屈に感じてしまうのも仕方ないし、泣けてくることもあるよな。
色んな人に共感できる映画だと思った。


冒頭数十分は主人公の平山さんの1日のルーティーンが映し出されてる。
日の出前くらいに、近所おばさんの箒を履く音で目覚め、育ててる植木に水をやり、
歯磨きをして、着替えて、カメラと小銭と鍵などを持って家を出て、
BOSSのコーヒを買って車に乗って、
スカイツリーが見えたらカセットテープで音楽をかける。
公衆トイレの掃除の仕事をしているので、掃除しに都内各所を周る。
休憩はお寺のベンチで、謎の踊りをしているホームレスと幸薄そうなOLを横目に昼食を食べる。
掃除が終わったら銭湯に行って、少しテレビを観て、居酒屋に行っていつものお酒を飲み、帰宅して本を読んで寝る。
仕事の日はだいたいこんな生活。
こんなシーンを繰り返すが、その生活の中で起こるちょっとしたことに目を向け、喜びや幸せを感じている。
朝天気がよかったり、音楽でちょっとテンション上がったり、木漏れ日が綺麗だったり、子供に手を振られたり。
ずっと何か大きな変化が起こるのかなと身構えていたが、全然そんなことはない。
あるとしたら、同じ職場のスタッフが辞めて一人で夜まで仕事しないといけなくなった日があったり、
姪っ子が突然家にきたり、
行きつけの飲み屋のママが男性と抱き合っていたるのを見たり、
せいぜいそんなもん。
何か伏線を回収する訳でもなく、側から見たらずっと同じような毎日を過ごしてるようにも見えるが、平山はそんな毎日でもなにか満たされたように過ごしている。

平山は写真を撮るから視点や考え方がカメラマンぽいなと思った。
誰か写真家のインタビューでこんなことを言っていたのを思い出した。
写真をやっていてよかったと思うことは?
という質問に対して、
「なんでもない、普段見過ごされてしまうような日常の風景や物事が美しいと思える瞬間が増えた。」
そんなようなことを言っていた。
まさに平山はそう言った視点や捉え方を持っているなと思った。
平山はなにか嬉しいと感じた時や幸せを感じた時にわかりやすく少し笑顔になる。
そのシーンが可愛らしくほっこりする。

なんでそういう考え方を持つようになったのかは映画では明かされないが大事なのはそういうことじゃないんだと思う。
でもあえてなぜなのか考えてみる。
平山は昔お金をそれなりに持っていて裕福な暮らしをしていのかなと思う。
好きなものも手に入れられてお金に困っていなかったのかもしれない。
だがお金が原因で色んなものが拗れて、どん底に落ちて何も信用できなくなった。
またその生活に戻るために頑張るが上手くいかず。
そんな時に幸せって何かを考えていくうちに、もっと身の回りに大切なものがあることに気づき今のような生活を選んだのかなと。

最後の車を運転しながら平山が笑顔を含みながら泣いてるシーンは
今の生活に充分満足しているし、幸せを感じられているけど、心のどこかでやはり寂しさや物足りていない、このままでいいのかという気持ちが多少はあるのかなと思った。
人間誰でも浮き沈みはある。
普段の日常を一瞬一瞬大切に幸せを感じながら生きていても、生活の中で出会う人やいろんなことを見て自分と比較したくなくても比較して辛くなってしまうこともある。
最後の涙はそんな涙なのかなと思った。

「影が重なったら濃くなるのか?」
そんな問いがあったが、
平山は
「なにも変わらないなんて、
そんなバカな話は絶対ない」
と強く否定していた。
自分は一見毎日同じような生活をしているように見えるけど、もっと些細な事に目を向けて変化を感じている、木漏れ日だって一瞬一瞬ちがう。だから同じ場所で見られる木漏れ日を何回も同じ位置で写真におさめるし。
でもやっぱり心のどこかで本当にそうなのかなて思ってしまう弱気な自分もいる。
そういう自分に向けても「なにも変わらないなんてそんなバカな話はない」
と言っていたのではないのかなと思った。
「自分は毎日perfect daysだ」と