Jellyfish

落下の解剖学のJellyfishのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
5.0
妻はドイツ人、夫はフランス人の夫妻、再起を目論みイギリスから移り住んだフランスにある山荘が舞台で、子供を含めた一家の会話に英語を選択した家族の物語。であるが故に、フランス製作ながらセリフはギリ英語成分が優勢で、アカデミー賞のノミネーションも外国語作品ではなく本賞という、あえてジャンルに当て嵌めるなら「ミステリー」な映画。

非常に多層的で多面的で、なんならメタなシナリオで、観客は時事刻々と他殺・自殺・事故の間を揺り動かされる。随所に変なズームや不自然なアングルのカットがあって、監督の意図をついつい勘繰ってしまう。
時に悲しげな、時に冷徹な演技が冴える主演は サンドラ・ヒュラー。脚本は彼女への当て書きとか。

多言語要素のある妻による夫殺しの物語というと、ちょうど一年位前に公開された「別れる決心」 を連想する。あちらも大好きな作品で、「ミステリー」の皮を被った何か別のモノというところも共通ながら、全く異なる味わいの作り上がりになっているところが面白い。

映画は一応の結論 (というか選択) を示すが、提示される数々の素材のどれにどう心を動かされるかで、見るものによって真実は異なるであろう。
事実とは、真実とは、そして裁判とは。
期待以上。お見事でした。
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