このレビューはネタバレを含みます
ほんとうは何があったのか、種明かしを求めてラストまでいろんな可能性を探ってしまうけど、この作品のテーマは真実の提示にはない。
事件に至るまでの夫婦の信頼の揺らぎと関係悪化、互いの非難がエスカレートする夫婦喧嘩の地獄、そのリアルさに呑まれつつ、家庭の幸福なる日常がある日をもって暗転していくドメスティックな奈落への追体験をさせられることそのものが、私が受け取った圧倒的メッセージだった。
ほんとうは何が起こったのか、それはむしろこちらに問いかけられてもいて、隠されたままの真実が余韻として味わうべきもののように宙に浮いたまま。納得はできてないけどそこにはもう触れなくてもいいような、そんな欠如感と満足感とが交錯している。