グシケン

落下の解剖学のグシケンのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.6
これ、最終的に絶対的真実の解明には至らないのですが、仮にやってたにしろやってないにしろ、検察がポンコツすぎません?笑
自分は法律家でも捜査機関の人間でもないから確信は持てないけど、まず、よくこの状況で起訴できたもんだと思う。自分なら不起訴かもっと捜査を続けるだろうと思った。録音音声があるというから期待したが、、、もう少し殺人の動機と捉え得る内容であってほしかった(むしろ少し妻に同情の念を抱いた。一方で、この録音の再生シーンは回想付きで、これが一つの人間ドラマとして成立していたのは面白かった。)。
法廷シークエンスは、全編観終えてから振り返ると、前半でもう決着がほぼついていたように思える。
本作の主旨は、極めて限定的な状況証拠しかない中で、有罪か無罪か五分五分の場合、実体的真実をどのように認定するかというものだと思う。それにしては、検察の追及があまりにもお粗末だったし、有罪にするにはあまりに間接事実が貧弱すぎたように思う。もう少し検察が善戦してくれたら見え方も違ったかもしれない。
とはいえ、法廷シークエンスでは、今この被告人質問はどんな間接事実を立証しようとしているのか(特に、いきなり学生を誘惑したかという質問から始まったのは面白かった。)、裁判官に対して自己に有利な心証を抱かせるためにどんなアプローチをかけているのかといったことを考えながら観るのは楽しかった。これは、よくある一発逆転的な法廷モノでは味わえない面白さだったと思う。逆に一発逆転的なのを期待して観たらがっかりするかも。
あと、最後の証人尋問のシーンで、子供が検察からの質問に対して、本作の本質を突いた回答をしたのには驚いた。ただ、子供の証言自体が判決に影響を及ぼしたとは思えなかったので、結局中途半端なシーンになってしまっていた気もする。
結論、退屈は全くしなかったし面白かったけど、細かいところで今一歩という感じでした。
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