hoka

落下の解剖学のhokaのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.1
法廷ドラマは好きだ。

何故なら法廷とは、常に真実を明らかにする為ではなく、弁護側と検事側双方の陪審員への影響を与える力量と裁判官のパーソナリティでどちらへでも転ぶ危うさがあるからだ。

事実、最後に結果は残されたが、それが真実であるとは限らない。

状況証拠と動機がある事と、売れっ子小説家というバックグラウンドがセンセーショナルである事だけで立件される安易さはフランスらしいのかもしれないが、証拠として提出される精神科医の主観的証言や、明らかに作為が認められるUSB録音音声や、個人的性的嗜好等、直接事件に関わりがない事項を執拗に責める偏執的検事(彼のおかげで退屈しない映画的にいいキャラ)等、観客が容疑者であるサンドラに肩入れする様に構成されている。

唯一の物的証拠である3本の血の飛沫の形状に関する考察場面が一番趣深かったが、あの様な決めつけられ方をされたらたまったものではないだろう。

S.ヒュラーはフランスに居住するドイツ人でサミュエルとの会話は英語というTrilingual という役どころだが、本人そのままに、会話劇において見事だという他ない。
特にUSB音声の夫婦喧嘩の場面は出色だと思う。

曖昧な結論付けが必ずしも秀作の証とはならないが、150分を越える映画で中弛むことなく最後まで興味を持続させる手腕は大したものだと思う。
hoka

hoka