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関心領域のnamiのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.5
先行上映にて。

『本年度最大の衝撃作』、『カンヌ国際映画祭 グランプリ』みたいな期待値で観たからか、映画の評価に関しては少し肩透かしを食らった感じもする...それはともあれ今観るべき一本なのは間違いない。

壁の外ではアウシュビッツ収容所の煙突から黒煙が燃え上がり人類史上最悪な大虐殺が行われている。一方、壁の外では収容所 所長の家族。整えられた芝生に綺麗な花が咲く花壇、まだ幼い子供たちと1匹の愛犬。場所が違えばまさしく幸せの象徴のような光景が広がる。

収容所の様子は一切映さず、壁の外を想像させるような"何か"が燃えるような音や、その"何か"のわめき声が小さく聞こえてくるだけ。妻はおそらくその何かから奪った毛皮のコートを自慢げに纏う。その子供たちもまた、何かの歯を遊び道具にし、外から飛んできただろう灰を雪だといい喜ぶ。物語にも妻の母が訪ねてくるも翌日には去っていたというシーンがあるが、常人では1日たりとも気が持たないような狂った光景。(ちなみに狂った妻役を演じたのは落下の解剖学で母役だったザンドラ・ヒュラー)

関心領域がズレれば、どんな残酷な現実も"知らない"で済んでしまう...現代への警告のような作品。

アカデミー作品賞、最有力とされる長編外国語映画賞他、音響賞にもノミネートされるほど、"音"の使い方が特徴的なので観る際は映画館をオススメしたい。音に殺されるかと思った。

ガザでの戦争や能登を襲った大地震。その現実に対してどれだけ自分が関心領域にいるのだろうと考えさせられた。
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