好き勝手なてそ

関心領域の好き勝手なてそのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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期待度MAXで公開初日鑑賞。
歴史は全く疎いが、事前に第二次世界大戦ドイツまわりの作品はいくつか鑑賞しました。

個人的にはめちゃくちゃ難解だったので、わからなかったポイントを下の方に書いて自分でも調べてみようと思います。

■あらすじ
第二次世界大戦最中のドイツ アウシュビッツ収容所の隣に住まう、収容所司令官ヘスとその一家の物語。
銃声や悲鳴なども遠くに聞こえる中、収容所の高い壁のすぐ外で暮らす彼らは、水浴びやピクニック、庭の手入れなど、まるで戦争など無縁な暮らしを楽しんでいるーー。

…くらいしか書けない。

■ざっくり感想(ネタバレなし)
ざっくりと、「芸術映画的な表現に全振りした歴史映画」という印象だった。かなり難解だった。
ホラーかと言われると、たしかにある意味ホラーかもしれないが、
散りばめられたメタファーのようなものが何を意味しているかある程度感じ取れないと、そもそも怖いかどうかもよくわからないくらいメタファーの連続だと思った。(メタファーっぽいというのは、繰り返しわかりやすく出てくるので何となくわかる)
私は、冒頭に書いた通り歴史にはかなり無知なので、正直多分この映画で言いたいことの7割くらい理解できてない気がする。
もっとこの戦時中のヨーロッパについて事前予習するべきだったなーと思ってとりあえずパンフレットは買った。

このあたりを予習すべきみたいな動画や記事は出してる方がいたはずなので、今から見ようか迷ってる方はそちらをチェックしてからでもいいと思う。

あっ、あと、
これぜひ予習したうえで「映画館で鑑賞」がおすすめだと思いました!
遠くの音も含めた情景が案外大事そうな映画だったので、配信で没入できる音響とかない方は多分本当にただ幸せな家とか、なんか…真っ暗な背景とか観るとおもいます^^;


わからなかった談義は以上にして、
ナチス政権まわりを描いた映画にしては、珍しいところに視点を置いた映画だなと思った。
思い起こせば、「血」や「銃弾」、「悲劇的な表情」が一切描かれない、戦時中の映画とは思えない斬新な構成だったので、
髪型や服装を見なければまるで現代の裕福なヨーロッパの田舎という印象の映像だった。

戦時中を描いた作品ってだいたい軍服の色や灰色、彩度を落とした配色が多いイメージだったが、その点この作品はずっと色鮮やかな景色が広がる。

戦争は悪であるという表現として「銃」や「血」はかならず描かれがちだけど、
この映画で言いたいのは、必ずしも人を殺すのは「銃弾」や「毒」だけじゃないよというのを、あえてそれらを描かないことによって表している気がする。

よくわからなくて気になったところは下に羅列するので、観てわからなかったポイント多すぎた方は一緒に悩めればです^^;


ーー以下ネタバレ含みますーー




■観終わった感想
収容所所長のルドルフの妻であるヘドウィグの関心領域は限定的で、自分や子どもが幸せになることでしかなく、毎日昼夜聞こえる銃声や悲鳴・怒号は全く気にしない。
そして、軍人としても父親としても優秀そうな夫を愛しているものの、彼が家を離れて戦地の安宿で暮らすことになっても厭わず、
自分は安全が確保されているのを良いことに、何としても自分はアウシュビッツから離れないようにできないか、なんとヒトラーにまで頼めないかとルドルフに伝える。

ルドルフほどの軍の方針に影響を与えた人を動かす、裏の大ボス。まさにルドルフにとっては女性版ヒトラー。
彼女がアウシュビッツで灰をまいて美しい花を咲かせているよこで、どれほどの犠牲者が灰になったのだろう。

「銃」や「毒ガス室」で誰かを殺すシーンはこの映画では出てこないが、女王ヘドウィグの幸せを守るためにルドルフはアウシュビッツ収容所を使って軍に貢献するということは、
ある意味この美しい風景も戦地だし、この他者の苦しみを一切理解しないようなヘドウィグの関心領域こそが戦いの根源にはあるという…そういう怖い話だなと思った。


■意味ありげなモチーフたち
(1)赤白黒
まずド頭からびっくりした。あんなにタイトルを長く見せる映画は初めて観たので、この段階でちょっとついていけるか不安になるw
そしてタイトルがあるならまだ良いものの、真っっ黒な画面もしばらく見せられる。
どういう意味だ…?
すると、次にいきなり美しい湖畔。
ピクニックを楽しむヘスたちの水着の色は、多分あの時から「赤白黒」だったと思う。
その後、この「赤白黒」は冒頭の真っ黒と同様、シーンの転換時に真っ白画面・真っ赤画面がアイキャッチのように入る。
収容所所長であるルドルフの妻ヘドウィグが洗濯物を干すシーンは、美しい真っ白。
他にも、プールで水浴びをするシーンの水着はやはり赤白黒だったかな。

(2)花・ライラック
この映画にはたくさん花や植物が出てくるので、これの色も何か意味がありそうだと見ていたけど、花の色は赤が多めに映ったシーンもあったものの、黄色やピンクなどわりと色とりどり。
気になったのは、ルドルフが伝令をいくつか出
していた中の1つに、収容所のまわりをライラックで飾りたいという内容があった気がする。
あれは何だったのか気になっている。
ライラックってことは紫?青?あたりの花だよな…?うーん。

(3)犬
ヘス家で飼っている黒い犬。この子が人懐っこいのか特にヘドウィグによくついてくる。が、かなりかまってアピールがあるし、よく吠えるし、主人が見ぬ間に庭の食べ物を漁る。
大型犬に見えるけど、ばりばり室内飼いのようなのであまり番犬として使っていなそう。
なんら役に立っていない愛玩目的オンリーな犬を飼えるというのは、当時ドイツの戦況が相当調子が良かったあらわれかなと思った。
後半でも一瞬、ルドルフの前に婦人が犬(ミニチュアシュナウザーみたいな)の散歩をしているシーンが出てくる。

[追記]
これもしかして、ヘドウィグをヒトラーか誰かに見立てて、犬は親衛隊リーダーの誰かで、裏切りとか思ったとおりに扱えない…未来のナチス党を表してる説ある?
最初はめっちゃ忠誠心抜群でくっついて来ていたけど、後半になるとごはんの方に夢中で一緒について来ないあたり…。


(4)豚
夫婦の部屋で就寝前に、ヘドウィグはルドルフに「イタリアのスパに連れて行って」と伝えるシーン。2人で豚の鳴き真似をする。
また、ユダヤの少女が隠れてりんごを収容所近くに持っていくシーンで、一瞬豚っぽいのが映る。

(5)鳥
夜眠れずに廊下に座り込む娘に対し、ルドルフは読み聞かせをする。
1つ目はあまりよく覚えてないが、たしか白鳥の話だった。
(2つ目はヘンゼルとグレーテル。かまどで焼く…やシャベルが次のシーンに関連していた)
また、アフリカまで飛べる渡り鳥の話を誰かがしていた気がする。
自由の象徴だったり、逆にルドルフがアウシュヴィッツを離れる暗示だったりするかな?

(6)扉
犬は番犬にならなそうな代わりに、家の戸締まりをかなり厳重にするルドルフ。
温室に次男を閉じ込め扉を閉める長男。
真っ暗な状態から扉が開かれる、現代の資料館化したアウシュビッツ収容所。

(7)水
冒頭の水浴シーンや川、庭のプール。
川から帰ったあとの風呂のシーンなど、水浴びをするところが多く出てくる。
シャワー自体ユダヤ人にはかなり貴重な存在だったはずだから、そのギャップを見せているとは思うけど、川のシーンは多いので他に何か意味がありそう。
ルドルフはどこでシャワー室を毒ガスで満たすことを思いついたのか…。
(ヘス作戦について「君の名でもある」とヘドウィグに言っていたので、実はヘドウィグの入れ知恵説もありそう)

(8)りんご
ユダヤ人の少女が秘密裏に置いたりんご。
なぜりんごだったのか。

(9)灰
焼却炉を2つ循環して稼働させようとするルドルフ。稼働停止した焼却炉はすぐ冷却され、灰を取り出せる。
焼却炉の煙突からは煙突や灰が吹き出す。
灰はヘス家の庭にも撒かれ、多くの犠牲者の死で生まれた灰により、ヘドウィグの植えた植物は美しく育った。

■理解追いつかず、気になったところ
(1)ルドルフの浮気シーンの意味
ルドルフが地元民?というメイドと身体の関係をもっていたことがわかるシーンがある。
浮気はおそらくヘドウィグにはバレてそうだったけど(食事を2つ置かれ、「私への当てつけか?あなたの灰を庭に撒く」とヘドウィグがいうシーンあり)、あれはどういう意味だろう?
初めて地下壕が映り、セックスのあとに念入りに下半身を拭いていたと思われる。

(2)ヘドウィグの母親の行方
ヘス家に泊まりに来たヘドウィグの母親。
豪華な庭を見て運がよかったと喜ぶが、収容所の様子を気にしていた。
ある日突然、連絡もなしにヘス家から姿を消す。
ヘドウィグはメイドたちに母を探すように命令するが、机の上の置き手紙のようなものを読むと、棚?ストーブ?に雑に放り込み、母親を探すことをやめ怒りの表情を見せながら食事に戻る。
この作品で一番恐ろしく見えるキャラクターといえばやはり、隣に何百万も収容し殺戮する残酷な収容所がありながらも、平和的な生活を望むヘドウィグだと思うが、母親は娘の暮らしを喜びつつもヘドウィグの人間としての感性の変化を受け止めきれず、黙って置き手紙で去ったのかなと想像したけど、どうなんだろう?
ヘドウィグは自分の幸せを母親に理解してもらえず、でももう自分達がの幸せにしか関心がないので、悲しみよりも怒りの感情がつのり後を追わなかったのかな…と。

(3)温室に次男を閉じ込めた長男
このヘス一家では長男はわりと目立たず(メイドっぽい人と逢引してたけど)、次男のほうが軍人である父を尊敬してか軍隊ごっこみたいなおもちゃ遊びをしていた。
ルドルフが家を出て以降、長男が次男を騙して温室に閉じこめるシーンが出てくる。
温室は、焼却炉や、シャワーだと騙されて閉じ込められる毒ガス室を表していると思うが、おとなしめの長男が次男を閉じ込め、笑って見ているというのはちょっと気になった。

(4)えづきながら階段を下るルドルフ
「ヘス作戦」が注目され、軍人としてどんどん出世するルドルフ、しかし家では、そんな残忍な計画をする軍人とは思えない平和なパパをこなし、「アウシュビッツの女王」と噂される妻ヘドウィグには逆らえない。(妻に「ヒトラーか」というシーンもある)
やっとアウシュビッツに戻れると喜びつつも、えづきながら階段をおりていくルドルフ。
ルドルフ・ヘスのwikipediaだけ軽く見てきたが、このあたりからルドルフは鬱病の傾向があり、自分の食事に毒が盛られてないか疑っていたりもしたらしい。
自分が他人を大量毒殺を計画したわけだから、意識的か無意識的か、自分にも返ってくるのではと思っていたのかもしれない。

(5)いきなり現代のアウシュビッツ
えづくルドルフのシーンにいきなり差し込まれる現代のアウシュビッツ収容所。
彼は何を見たのか…。



パンフレットを読んだら、もう一度映画館で見直したいと思う。