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関心領域のプレコップのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.9
かくして彼らは負の遺産になった

原題をそのまま訳した邦題通りの作品。関心のある世界は狭く、無関心の世界はとても広い。現実逃避をするのにはいくつか理由があり、目の前の幸せより先が見えない、そもそも認知しない、しようとしないから想像できない、ささいな問題が大きく見える、そして自分に嘘をつく。逃避してきた現実を知り、潜在的に感じ取っていた後世の視線に気づいたあとのラストがとても印象的だった。

なにより、音響面の表現が素晴らしく、鳴り響く重低音が凄惨な出来事を雄弁に伝え、打撃音や発砲音がどん底に突き落とす。また、家の門の外を走る軍用車や軍人の影に注目させる映像表現はホウ・シャオシェン諸作を思い出した。

独特な映像や音響の表現はナチスの罪を新たな形で見せることに成功している。しかし、そんな巧妙な表現を少し説明的なセリフの違和感がボヤかしているようにも見えてしまうのが玉に瑕。
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