いつもいっちゃん

関心領域のいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.8
本年度アカデミー賞作品賞他5部門ノミネート。
国際長編映画賞、音響賞受賞。

特異な映画体験。
始まりから画面が暗闇の中、不穏な音楽と共に幕開け。
幸せそうな家族が映し出される。
富裕層の家族の正体と住んでいる場所のおぞましさ。
ひたすら淡々と映し出されるホームドラマに潜む恐ろしい音の数々。
その音に想像と戦慄を巡らせるほど、家族の間の会話が頭に入って来ない。
無関心というよりかは意識がその状況に慣れてきている様にも見える。
聞こえてはいる。だが潜在的なものになっている。
人間の感情の一部が欠落したかのような、ある種の洗脳ともとれる。
しかし一方で、塀一枚の先から出る悲鳴や銃声、煙と共に漂う死臭に耐えきれない第三者も描かれるのもまた別の視点を含む。
子供の善意が招く悲劇もまたえげつない。
音だけではなく、視覚の面でも見せないことを徹底した絵作りがまた強烈。
あえて美しい映像になっている印象。
汚い部分は見せない。目の前にある綺麗な部分だけを切り取るかのような構成。
目は伏せれても、耳は、、、
カメラが追う人物と光景。
隙を作りつつ、隙がない。
「サウルの息子」を想起するが、ある意味この映像美がより不気味にホロコーストを生々しく映し出す。
ラストの変換も意表を突かれた。

観る側の受け取り方が問われる1作。
2回鑑賞しましたが、間違いなく2回目の方が読み解きがしやすく面白い。