オロゴン

関心領域のオロゴンのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
2.6
この映画の問題意識に向き合おうとすれば、自分が今イスラエルのラファ攻撃のことを考えていないということを考えてしまいます。

ラストに映画としての大きな仕掛け、歴史をジャンプする巨大なモンタージュがありますが、徹底して直接表現を避けてきたこの映画が最後に現実の跡を堂々と映します。
私達はそのような痕跡から凄惨な事態を想像することができますが、この映画が画面に映しているものから現実のおぞましさを想像することができるのは、映画がその歴史において現実のおぞましさを具体的なイメージとして立ち上げ続けてきたからではないでしょうか。

つまり、この映画が達成していることはこの映画による達成ではなく、映画史が達成していることなのだと私は思います。

映画の歴史があるからこそ、私達は画面に映る水面から、見えない底に沈んでいるおぞましい現実を想像することができます。
そのようにして映画の歴史によって現実の歴史と向き合うことができるのだとすれば、それは映画の希望と言えるかもしれません。
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