Kasai

関心領域のKasaiのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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他人の連れた犬が昔の飼い犬に似てるとか、今度育てたい野菜のこととか、住んでる家を離れたくないから夫には単身赴任をしてほしいとか、そんな日常をアウシュビッツ収容所の真横でやり続ける。
収容所をひたすら関心の死角に置き続け、虐殺に関して出てくる数少ない話は「いかに効率よく死体を焼けるか」、それも死体の数え方は「人」ではなく「体」。ユダヤ人に関しても「ユダヤ人は壁の向こうよ」くらいにしか触れられない。
映画史においてはある種悲劇的なドラマの場として扱われてきたアウシュビッツから、ひたすらにドラマ性を排し続ける様子からは、見たくないものを見ないようにすることがいかに残虐性を孕んだものなのかを可視化しているような、静かだけれども確かな狂気を感じました。
ただそれを昔のどこか別の世界の話、にするなよっていうのがラストシーンの意味合いなんだろうなと。
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