矢野竜子

関心領域の矢野竜子のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.7
正直映画を見てる暇はないのだけれど…
ジョナサングレイザーの新作ということで強引に観に行った。
「目に見えるものと見えないもの」の映画。
そこに何が映っていてそこに何が映っていないか。
分断する今の時代感とリンクする部分も
多分にあり、恐ろしい。
これでもかとたくさん登場する扉や壁や窓。
扉や壁や窓があるからこそ空間は形成され、
ひいては排除という概念を生む。
ただ扉や壁や窓がない現代のネット空間でも
排除という概念は生まれている。
ネット空間同様に目に見えない人に対して
人はどこまでも非道になることが
できてしまうという怖さ。
本当は吐くほどの痛みを伴うものであるのに。
排除され人として見えないがゆえに音や煙が
その存在を浮き彫りにし、
皮肉にも映画的空間を拡張させる。
分断的なカット割がただの切り返しによって
思わぬ空間と接続をみせるあたり良い。