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関心領域のDのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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ジョナサン・グレイザー監督の最新作は、対比表現であったり、直接的ではない斬新なアプローチあったり、その功績は映画史に残る記録的な恐怖演出に結びつき、記憶にも脳裏を否応なく強烈に刺激されるため、長期的に残る。

アウシュビッツ収容所の真横で暮らす幸せそうにみえる、ある家族を描いた作品。

その主は、SS幹部ルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘスという実在した、アウシュヴィッツ強制収容所の所長。

その妻は、ザンドラ・ヒュラーが演じるヘートヴィヒが重要な役を担う。

断片的な情報と音で、みる人間の知識とイマジネーションがある程度固定され、感性にヒシヒシと迫ってくる。

日常的に聞こえてくるわずかな異音が耳はもちろんのこと、また違和感のある描写がさりげなく映り込むことで居心地悪さを露呈し、想像を掻き立てられる匂いなどを考えずにいられなくなる。

用意周到に張り巡らされた仕掛けが見事でありつつも、怒りを覚え、苦痛で居た堪れなくなり、悲しくなる喜怒哀楽を巧みに操られる危険を孕んでいる。

尚、真に恐ろしく感じるのは、アウシュビッツと隣り合わせの不変的な存在だ。

カンヌ映画祭グランプリ、アカデミー国際長編映画賞、音響賞。
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