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関心領域のぱぷのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.1
観ながらふと思い出したのが昔映像の世紀で観た「いいや、貴方たちは知っていた」の一言 収容所解放後、アメリカに収容所内を見学させられたドイツ人たちが「こんなの知らなかった」と取り乱す姿に、解放されたユダヤ人たちが言い放った言葉 無知ではなく、無関心なだけなのだ 肉や髪が焼ける臭い、乾いた銃声、響く怒号と悲鳴…最初はおぞましいと感じた描写が、段々BGMのように気にならなくなってくるのも、恐ろしい光景を安全地帯から眺めてドキドキしながら消費しているのも、自らも彼らと、ヘス家そしてユダヤ人たちと地続きであるという、なんて皮肉めいた構造

そして「どうせこの人たちは…」という自らの歪んだ"関心"へのクエスチョンも突きつけられたような気がした ヘスの回顧録には自らを悪人ではないと書いているそうだが、(虐殺が許されることではないにしろ)無関心とはまた逆の"関心"を抱いてしまった自分の暴力性に気付く 全身に力が入る、過酷な映画 事実は小説より…というので最後の数カットは心の底から恐ろしく、若干吐き気を催しながら帰った

ドイツ人のザンドラ・ヒュラーが出演するか最後まで悩んだとインタビューで言っていたけれど、本当に勇気があると思った 私はまだ落下の解剖学しか知らないけれど、落下の解剖学も世間から手放しに賞賛されるような役では無いような気がするので、今回の役どころもかなり…なんというか、偉い、というか、偉いなあ、とアカデミー賞でジョナサン・グレイザーのスピーチに涙を流す彼女を思い出した
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