kuma

関心領域のkumaのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.7
隣の芝生は青い。いや、ヤバい。

もしこの映画をサイレントの状態で観たらファミリームービーにしか見えない、という恐ろしさ。そんくらい音響が超重要。耳だけで伝わる情報が惨状を物語っている。音響賞を獲ったのも納得。

「この映画の中で描いたのは、私たちが人間として、お互いに何をするかだと思う。」今作の監督、ジョナサン・グレイザーさんの国際長編映画賞受賞時のスピーチ。実はこの映画を観ている時に、あるおじいさんが自分の座っている一番後ろまで階段を登ってきて「すいません、出口どこですか?」と尋ねてきた。映画に集中したかったので、その場で口頭で説明したが、そのおじいさんは途中にある非常口扉から出てしまって、戻ることが出来なくなってしまった。そこからドアを何度も「ドン!ドン!」と叩いていたので、一度退出してスタッフに声掛け。そのスタッフが扉を開けてくれたが、どうやらパニックを起こしてたらしい。

スタッフに声掛けした後に、その非常口扉付近にいたのは自分と、同年代くらいの男性、その二人だけ。なんか今作の状況と似たような現象で興醒めしてしまった。正常性バイアスの恐ろしさを肌で感じてしまった。もちろん、こうしたことが起きないのが望ましいが、ウクライナやパレスチナといった国際情勢から、ラーメン二郎の火災の件まで、大なり小なり起きてしまうもの。そこに「知らんぷり」ではいられない。(自分がもっと的確に説明すれば良かった、しっかり出口まで道案内すれば良かったという申し訳なさもあるが)いかに「他人事」を「自分事」のように思えるか。「無関心という恐怖」が本当に怖い。

よそはよそ、うちはうち。そんな他人事では絶対に済まされない。五感すべてで見えない恐怖を味わいました。ただ1番怖かったことは、パンフが品切れだったこと。
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