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関心領域のcーfilmsのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.8
だいたいのあらすじを知って行ったのだが、思っていたのとまったく違ったのは家族たちの人柄だ。完全に世間知らずで優雅な奥さんと、きれいで無邪気な子供たちが、具体的なことを何も知らされすにどこか白痴な様子で生活しているのかと勝手に想像していた。しかし奥さんは、品のない歩き方、粗野な振る舞い、10代からの野心、掃除婦だったお母さん…など、映画の端々からこれが必死で手に入れた生活だったことがわかる。子供たちも、夢遊病のように夜半廊下にいる子(この子のシーンから続く白く光る少女が食べ物を置いて回る映像はとても美しい)、塀の外の拷問の様子を聞き「もうするなよ」と同情する子、弟を温室に閉じ込め独裁者のように振る舞う子、そして一番不穏さに敏感で泣き続ける赤ちゃん…とみんな十分すぎるほど知っている。音や気配でアウシュビッツの圧倒的な恐怖を表現した実験的な作品であり、塀の中のことに思いを及ばせるべき映画だが、それと同時に一人の女の恐るべき生き様に愕然とする映画だった。
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