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北極百貨店のコンシェルジュさんのRのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2023年の日本の作品。

監督は「みつあみの神様」の板津よし覧。

あらすじ

新人コンシェルジュとして、秋乃が働き始めた「北極百貨店」は来店されるお客が全て動物という不思議な百貨店。百貨店には様々な悩みを抱えたお客が現れ、お客の想いに寄り添うため、秋乃は今日も元気に店内を駆け回る!

西村ツチカの原作漫画は本屋で表紙を見て一目惚れして購入するも、すみません💦なかなか読めずに今日まで来てしまったんだけど、今回映画化するということでこの映画を観てついでに漫画も(読めたら)読もうということで鑑賞しました。

結論としては面白かったけど…というところ。

お話はあらすじの通り、ジャンルでいうと「お仕事映画」に部類されるのかな。

で、舞台は高級百貨店というところが個人的にすごく突き刺さる!昔から自分自身デパートとか大好きで、あの色んな店が並ぶキラキラ感となんかどっから香ってくるかわかんないけど、常に良い匂いが漂ってくる感じが今作でも上手く表現できている。それもそのはず、エンドロールで取材協力で高島屋や伊勢丹が協力しているらしく、なるほどその感じがちゃんと出てる。

で、それが原作の西村ツチカの絵柄を制作のプロダクションI.Gがちゃんと再現してキャラクターたちが温かみのある手書きタッチで動き回るのでまぁー観ていてそれだけで楽しい。

また、今作の特徴として百貨店は百貨店でも来店するお客様はみな動物という点。主人公の秋乃をはじめ、コンシェルジュや他のスタッフは一名を除きみな人間で、なぜそのようなお店なのかは劇中あんまり説明されないけど、それでも多種多様な動物たちがまるで人間そのままなファッションに身を包んで買い物を楽しそうにしていて、ここも観ていて微笑ましかった。

で、その中で繰り広げられるのは新人コンシェルジュ秋乃のお客様対応!!どうやら幼少期に出会ったコンシェルジュに憧れて、自身もコンシェルジュになった秋乃がお客様の気持ちに寄り添い、奮闘する様を描いているんだけど、なんか見ていてすごくフレッシュ!!

ただ、割と描いている部分はこういうサービス業務をしている方々にとってはあるある〜となりそうなリアルな感じ。ワライフクロウの夫婦を接待するフェレットに対して、どうやったら金持ちのフクロウたちを喜ばせることができるかとか親子のウミベミンクそれぞれがサプライズプレゼントを計画していて、どうやったらお互い別のタイミングで来店している親子にバレずに喜ばせることができるかとか、指輪を渡そうとしているらニホンオオカミの彼氏のプロポーズをどうやったら成功させることができるかとか、バーバリライオンの子どもが探している香水の匂いを当てるとか様々なお客様のお手伝いをするんだけど、秋乃による「行き過ぎた」ホスピタリティが徹底していて、あぁやっぱこういうサービス業ってやりがいはあるんだろうけど、一人一人のお客が「何を求めているか」を細かく察知して、顧客満足のために気持ちを働かせないといけないから大変だよなぁーと感心してしまった。

でも、ただでさえ人間でも「ありがとう」と言われるのは嬉しいのに、愛らしい動物たちに「ありがとう!」って言われたらと思うとやりすぎだけど頑張る秋乃さんの気持ちをわかる。

ただ、お客様対応の良い部分だけでなく、「悪い部分」も見せてくるのが本作。個人的にも1番印象深かったのが、後半でアザラシのマダムがお客様で出てくるんだけど、まぁこのアザラシがやばいやつではじめは世間知らず風に「婦人服はどこにあるのかしら?」的に秋乃さんに話しかけて、秋乃さんが親切に対応するのをいいことにどんどんクレーマーとして肥大化していって、荷物運びとしてこきつかったり、欲しい服がサイズがないと知ると「今すぐ持ってきて!」と駄々をこねる!特に秋乃さんがそれは難しいと言われると「サービスってどういう語源か知ってる?servant(召使い)って意味よ!つまりお客さまは神様ってわけ!」と怒鳴り散らかす始末、こえぇー。この静かな感じから徐々にトーンを上げていくいやらしさが抜群で、もうなんかちょっとアザラシが嫌いになるくらいだった笑。

ただ、そこに救世主ばりに秋乃さんにとって憧れのコンシェルジュ(らしい描写があるので本当にその人かはわからないが)、森さんが「他の神様に迷惑です」とカウンター返ししてくれるので溜飲は下がるんだけど、とにかくほんわか雰囲気の本作において、かなり異質ながらサービス業の嫌な部分が絶妙に表れているシーンだった。

そんな感じで続いていく本作で、まぁ基本的には見ていて楽しいんだけど、上記でも述べた秋乃さんのお客様対応がやや「やりすぎ」な部分があり、加えてその解決方法も周囲の尽力があって成り立つ部分がほとんどなので、どうしても秋乃さんが甘やかされているように見えてしまうというか、もっと自分の力でなんとかしてほしい部分はあったかなー。あと、劇中では「V.I.A(ベスト・インポータント・アニマル)」と呼ばれる「絶滅危惧種」のお客様ばかり対応しているので、必然的にVIP待遇のお客ばかりで、他のお客がぞんざいに感じてしまう部分もあった(クジャクのカップルなんか道具として扱われちゃってたし)、だから最後の秋乃さんの「この仕事のやりがい」が昇華していく大事な部分の感動もなんかちょっとピースとピースが合わないというか直結しなかったなぁ…という印象。

まぁ、ただ優しいタッチの絵柄で描かれる百貨店の様子は観ていて楽しいし、意外とリアルなサービスの様子なんか観る意味でも全然観ていてよかったと思える作品でした。

原作漫画も読まなきゃなー。
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