月子映画ムーンライトはいいぞ

ハロルド・フライのまさかの旅立ちの月子映画ムーンライトはいいぞのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ただ過ぎていくだけの日常に、一通の手紙がやってくる。
差出人はかつての同僚。今は末期癌でホスピスにいるという。
主人公ハロルドは彼女に手紙を書くが、なにか曰く因縁があるもよう。
手紙を書いたはいいが、投函する踏ん切りがつかないまま街をそぞろ歩いて、ガソリンスタンドの売店の女の子に「手紙もいいけど、大事なのは心。私のおばも癌だったけど、信じることで救われた」と天啓とも言える助言を受ける。
そして思いがけず800キロ先まで歩くことになるーー
果たして、老体の彼はたどり着けるのか。
彼女との因縁とは?

というお話。
だいたいこういうロードムービーというのは、道々出会う人から刺激を受けて人間的に成長していくのがお約束ですけど、ハロルドが最初に会ったのが

毎週少年買春をして、少年の靴の先を舐めてる男

で「いや初手から濃すぎるわ」と心の中で叫びました(笑)

男は、彼の靴に穴が空いてるのに気づいて、新しいのを買ってやりたいけど、少年が逆に傷つくだろうか…と相談してくる。
それに「買ってやったらいい」と答えるハロルド。それ以外なんつったらいいのか(笑)

こんな感じで、ちょっと変な人に会いつつコミカルに行くのかなーと思ったら、道中フラッシュバックする記憶で、実はハロルドが息子を失って、その件以来妻とも仮面夫婦であることがわかってきます。

元同僚との関係も、不倫か? と思わせて、その息子のことで荒れて勤めていたビール工場の商品をぶちまけた彼の身代わりになって辞めていったのだということが明らかに。

そりゃー、死に目に詫びくらい入れないといけませんわな。

というわけで、やっとたどり着いたホスピス。途中で電話を入れて、ホスピスのシスターから、頑張って生きてますよ!と聞いていたので、てっきり会話できると思っていたハロルド。

しかし現実はそんなに甘くなく、彼女はもう本当に末期。ハロルドの存在もわかっているかどうか…

それでもハロルドは、途中お土産に買ったサンキャッチャーを窓辺に飾ってその場をあとにします。

迎えに来ていた妻。
息子の死後、家から出ていなかった妻がハロルドを迎えに来て、結局なにもできなかった…と落ち込むハロルドにこう言います。
「でも今回の件で、私はあなたのことを愛してるとわかった」

ロードムービーって、だいたい主人公の「生き直し」のお話だからこれでいいんです。
特別な奇跡が起きなくても。

ラスト、ハロルドの吊るしたサンキャッチャーの光が、道中出会った人たちの頭上を照らすのも、少しは彼らに影響があった、あるといいな、という表現に感じました。

やさしいお話。


ところで、個人的に、途中からTV中継されるようになったハロルドの知名度に乗っかって、わらわら人が集まってくるのがリアルだなーと思いました。
なんなんだおまえら。自分探しくらい自力でせえよ(笑)

彼らもまた、ハロルドと妻のように、いつか在るべきところへたどり着けますように。