ゆうひ

タイタニックのゆうひのネタバレレビュー・内容・結末

タイタニック(1997年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

「パニック×数日のラブロマンス×実話ベース×長い」という最悪の組み合わせで面白いわけないと思い、公開から24年、あえて見ないできた。が、色んな縁が一気に巡ってきたので見てみた。

実際見た感想はスコアの通り。
めちゃくちゃ良かった。
予想と大きく違ったのは、ラブロマンスでありながらラブロマンスに留まらない点。人としてどう生きるかを問う深いテーマがあった。

色んな角度からの見方があると思うが(だからこその興行収入だと思うが)、私は「対比」という点に特に着目した。些細なことから重要なことまで、「対比」が無数に散りばめられている。私が見つけた対比の一例が、

・金持ちと貧乏
・幸運と不運
・船首と船尾
・前進と後退
・柵の内側と外側
・男と女
・言語化と非言語化

しかもこれらの全て、どちらか片方が一方的に幸せだということがない。同じ船、同じ一度きりの人生に立ちながら、ある時は片方の要素が良く、ある時は悪い。

中でも一番ドラマティックだと思った対比は、船首と船尾。二人が船尾で出会った時、ローズは上流階級の流れから引き戻してほしいと願っていた。その願いを反映するかのように船はローズの背後へ進む。死のうとしたローズはジャックに助けられ、そして一番有名な船首のシーンに至る。船が前進していることに変わりはないのに、ローズは自由な鳥のように人生を前に進み始める。

更に、出会いのシーンでは船尾でジャックがローズを柵の内側に引っ張り上げたが、ラストシーンでは柵の外側に引っ張り上げている。
これは対照的な行動だが、動機は何も変わらない。ローズに生きてほしいという想いである。
対比が、変わらないものをより強く伝えてくれる。

思い返せばそもそもの物語の始まりが、「希望を失い沈んだ船」と「希望を求めて潜る潜水艇」だった。冒頭からすでに、皮肉でロマンティックな対比の世界に誘われていたのだなと思った。
作中だけではなく、人生にはそのような対比がたくさんある。エンディングを聴きながら、自分はどこに立ちどこに向かうのかと胸がいっぱいになった。
ゆうひ

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