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タイタニックのERIのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
4.7
やっぱり、完璧な映画だ。

1997年公開当時、爆発的に人気で私ももちろん劇場に観に行ったひとり。その後、テレビでも何度も放送されていたから今回観るのはきっと3度目だと思う。今年に入ってレオ様に改めてトリコで、また観たくなったので再鑑賞です。

1912年4月15日豪華客船タイタニックが海に沈んだ。冒頭のタイタニックを潜水カメラで調査するシーンも丁寧に作られていて、煌びやかな残骸に後世たちの宝探しに夢中になる静けさのドキドキが上手く描かれている。置き去りになった仮面、腐敗したピアノ、取り残された金庫。

出てきたのは美しい女のヌードデッサン。その絵を見た老婆は、驚いていた。84年前に描かれたその絵に。その女性の名はローズ。目を閉じると思い出す、彼の真剣な眼差しを。

その船は絶対に沈まないと言われていた。脇役のキャストさん含めて全員完璧な配役。そして若かりしローズを演じるケイト・ウィンスレットの華やかさ。上流階級の娘で勝気ではあったけど、親の言いつけには従わないといけない。父が亡くなり借金だけが残った。女2人で生きていくには、お金持ちと結婚するしか生きる方法はないと、母はそればかりだった。

一方、酒場でポーカーをしているジャック。この時のレオナルド・ディカプリオのキラキラ感が半端ない。タイタニックの切符をかけてフルハウスでチケットを手に入れた。これでアメリカに行ける!

タイタニックは多くの人の夢や人間模様を乗せて、出発した。一等の部屋ではローズが絵を選んでいた。いくてに広がるのは大海原。石炭をくべてぐんぐんと進む。音楽もいいんだよなぁ。

船の先端で手を広げるジャック。一方ローズはつまらない食事の時間に霹靂としていた。その彼女の寂しそうな横顔にジャックは一目惚れした。人生の先が見えて同じ顔ぶれで同じ毎日が想像できてつまらなかった。息が詰まりそうで。

その日の夜、二人は出会う。

もう限界でたまらなくなったローズは船の手すりをまたぎ海の中に飛び降りようとしていた。ジャックは、ローズに声をかけた。推し量って出来るだけ普通に。飛び込んだら痛いだろうな、って。この出会いのシーンは素晴らしい。ジャックとローズのキャラクターをとても表現している。緊張感とユーモアが入り混じってグッと距離が近くなる。

56カラットのダイヤ、碧洋のハートは大金持ちの彼からの贈り物だった。全く愛していない。ジャックはローズに誰も聞かなかったことを聞いた。彼を愛しているの?

ローズはジャックの世界に少しずつ惹かれていく。シンプルに素敵だと思う眼差しで世界を見て、それを描く。彼のスケッチに彼女はドキドキした。新しい世界との出会いだった。

ジャックのサスペンダー姿も可愛いけど、タキシードも素敵。この当時の細身体型がかっこよすぎる。ローズは、ジャックを見て惚れ直す。手の甲のキス。映画を見て一度やりたかった、の生意気な顔のレオ様が最高に魅力的。

ローズのママが意地悪な質問をしても、ジャックはぶれず自分の意見を言う。蔑まれた視線の中でもまっすぐに自分はもうすでに必要なものを持っていると、健康な体と心とスケッチブック。毎日が未知でこんなにも恵まれたものはないと。これは贈り物だから。惰性から抜けだせなかったローズには一番欲しい言葉だった。今を大切に。

待ち合わせした時計台からローズの新しい扉が開く。3等室では音楽が鳴り響き、みんなが思い思いに踊る。このシーンの2人はキュートすぎる。

夫になる予定の男は、癇癪持ちで独裁的だ。怖くて怖くてたまらなかった。ジャックには会うなと言われた。同時にタイタニックにもリスクが近づいていた。この船には救済用のボードが乗客の半分しかなかった。氷山が迫っていることがわかっていたのに、大きな対策も取られなかった。

蝶は身動きが取れないローズの象徴。ローズが感じる様々な違和感は保守的な思想で本能の赴くことを閉じ込めようとしたけれど、ローズはふと我に返った時気付いたらジャックの元へ会いに行っていた。この船の先端で手を広げて「空を飛んでるみたい」のシーンは、2人の美しさとかけがえのない愛と、そして自由があったんだなぁ。言わずもがなの名シーン。

絵を描く準備の時、蝶のかんざしを外すのは彼女が自由になった証だ。服を脱いでダイヤだけをつけて、ローズを描くジャックは真剣な顔。めちゃくちゃかっこいい。こんな愛され方、最高です。誰も自分の心なんてわかってくれないって思っていたのに裸の自分をみてくれた人。忘れられるわけない。2人で逃げ出した先。車の中で隠れてキスをしよう。

そんな2人の愛の時間とは裏腹に氷山は近づいてきてると言うのに、まるで危険の中に突き進むかのような操縦。気付いた時には目の前に氷山が。左いっぱいに舵を切り直すけど、ぶつかって知った船は水が船内に入るのを止められない。

船が沈んで開く後半。2人を追い詰める危機がこれでもかと押し寄せてくるけど、決して2人は見捨てたりせずお互いを信じてギリギリのところを乗り越えていくのもまた泣いちゃう。

ジャックは最後の最後までずっとローズに希望の言葉をかける。諦めないでの言葉にローズは最後の力を振り絞って笛を吹く。

ジャックのことはこれまで誰にも話さなかった。写真にも残っていない。でも私の中で生き続けている。ジャックから救われた人生は、彼女にとって馬に乗ったり飛行機に乗ったりやりたいことをやってきた人生だったんだろうな。ジャックから教えてもらった諦めないということは、きっとそういうことだったんだ。

エンディングも最高で、みんな生きてて、迎えてくれる。時計台の前にはジャックが手を差し伸べる。夢の船。タイタニック。ローズはそんな夢の中で永遠の眠りについたんだね。

この作品の素晴らしい点の一つに、登場人物の描写が本当に繊細に描かれていて、とっさになった時の人間性や振る舞いが秀逸。その一人ひとりの描写に悔しかったり悲しかったり寂しかったり、その中でジャックとローズの愛が際立って美しくてたまらない。
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