ぶみ

ペナルティループのぶみのレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
3.5
それはたぶん、史上最悪のループ。

荒木伸二監督、脚本、若葉竜也主演によるSFドラマ。
恋人を殺害された主人公が、犯人を復讐する一日を繰り返すこととなる姿を描く。
主人公となる青年・岩森淳を若葉、恋人・砂原唯を山下リオ、岩森に復讐される溝口登を伊勢谷友介、タイムループの鍵を握る男をジン・デヨンが演じているほか、松浦祐也、川村紗也等が登場。
物語は、恋人を殺害された岩森が復讐のため溝口を殺害した後、眠りにつき、目覚めると再び同じ日の朝に戻るというタイムループを軸として展開、ひたすら岩森が溝口を殺害するシーンが繰り返されるのだが、繰り返すたびに殺害方法が異なっていたり、微妙に時間軸がずれていたり、はたまた殺害される溝口にもその記憶があったりするため、それぞれのループの違いが楽しめるのに加え、二人の間に奇妙な関係性や連帯感が生まれ、ループの終盤に至っては、もはやコメディに近くなり、そこはかとない面白さを醸し出している。
そのタイムループに関して、ネタバレになってしまうため、あまり深く書くことはできないが、本作品の肝となる部分は微妙なリアリティがあり、その意図を考えると、そんなこともあるのかなと思わせてくれるもの。
また、その部分に関しての説明は台詞では殆どなされず、映像表現で語ってくるものとなっており、詳細なところはそれなりにわかるものの、肝心の大枠の部分の説明がなされないため、詳細部分を脳内で繋ぎ合わせる作業が観る側に委ねられることとなるが故に、ラストも様々な解釈ができるであろうものとなっている。
クルマ好きの視点からすると、岩森が乗るのが黄色いフォルクスワーゲン・ポロと、小洒落たクルマとなっているのに対し、溝口が乗るのがリアの2本ワイパーが特徴的な、昭和感溢れるトヨタ・マークIIバンと、職人気質なクルマになっているのが対照的で、それぞれのキャラクターをわかりやすく示しているなと感じた次第。
また、イメージビジュアルにもなっている水耕栽培のハイテク工場が、本作品のディストピア感をアップさせていると同時に、私的には中盤にあるボウリング場のシーンが、映像的にも凝っており面白かったところ。
振り返って見ると、環境音への拘りが本作品の見どころの一つとなっており、ここ最近で言えば、荒木監督の前作『人数の町』のようなディストピアものや、竹林亮監督『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』、山口淳太監督『ドロステのはてで僕ら』『リバー、流れないでよ』といったループものが嫌いじゃなければ楽しめるであろう内容であるとともに、私が観たスクリーンの階下がボウリング場になっているため、観終わった後、思わず覗き込んでしまった一作。

俺も何もない。
ぶみ

ぶみ