ガンギマリポテト

グランツーリスモのガンギマリポテトのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
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『第9地区』『エリジウム』が大好きで、『チャッピー』『デモニック』や短編作品たちでうーん...となり、『エイリアン』の企画が倒れ、最新作はグランツーリスモと日産チームが題材...と聞いたときは正直、大丈夫なのかな?なんて心配してたけど、やってくれた!作家性自体は薄くなったものの取り敢えず、ブロムカンプ、完全復活だ!!!

『フォードvsフェラーリ』が“夕暮れのクルマ映画”なら、本作は紛れもなく“夜明けのクルマ映画“(是非とも二本立てで上映して欲しい)。『ロッキー』のような映画を目指した、という監督のコメント通り、底抜けに爽やかな胸熱青春ドラマになっていた。

最近は北米圏でF1の再ブームが来てるらしいけど、今や走る側も見る側も金持ちのものになってしまったモータースポーツの世界を、ストリートのゲーマーがガンガンのし上がっていくサクセス・ストーリーとして痛快のなんの!

しかしながら、今後の社会においてガソリン車はどのような存在になっていくのか、そんなことは最初にオーランド・ブルームにちょっとだけ言わせておいて、一旦忘れてゲームをしようレースをしよう、と題材に対していささか呑気な映画であるのも確か。もはやガソリン車のロマンはそれぐらいにファンタジーにしないと語れないんだな、と痛感し一抹の寂しさも覚える。
(イヤーモデル制とはいえ、R35ってもう16年も前のクルマなんだぜ...GTアカデミーだって随分前に終了してるらしいし。)

あと、UKの若者は焚き火を囲んでJojiなんか聴いてるのかは謎。マンチェスターのストリートからのし上がる話なら、ゴリゴリのドリルとかもう何曲かぐらい流しても良かったんじゃ...

ともあれ、ブロムカンプは今の映画界で最も美しくメカを撮れる映画監督(『アバター』フランチャイズに集中する様になってしまったキャメロンを除くなら)。ハリウッドとある程度の距離感がある点でも稀有な存在で、ワイスピやMCUに足りないメカへのフェティッシュさを存分に叩き付けてくれる。
主演の彼の今後のキャリアも楽しみだし、もちろん『第10地区』も楽しみにして待っていよう!!


【追記】
ニュルブルクリンクでのクラッシュ事故の時系列を物語の構成のために実際より早く脚色したのは批判するべき点だと思う(実際はヤンがルマンで入賞した後の事故らしい)。
ドラマを盛り上げる以上仕方ないことのようにも思えるけど、実際に死亡者が出て遺族も居る中で、起こった事をショービズに都合よく歴史修正をするのは倫理的な観点からしても如何なものか