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グランツーリスモのnatsuoのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.9
「激アツレーシングシミュレーション(リアル)ムービー」

空前の車ブームが一家で巻き起こっており、自分はほとんど通らなかったのに小6の弟がどハマり中。父親は元々車が好きで、なんでそんなに知ってんの?ってくらい詳しい。なので弟がハマり始めると一気に家の中に車のプラモやら雑誌やらが溢れ始めた。そして弟は、あったのに全くやってなかった「グランツーリスモSPORT」を引っ張り出してやり始めていた。挙げ句の果てには頑なに買ってくれなかったPS5を、酔った勢いなのか急に買ってしまい「グランツーリスモ7」が家にやってきた。この時は本作の製作発表は知っていたが、どんな話になるのか全く知らなかった時期(予告も未公開)だったと思う。自分も一通り触り、めちゃくちゃむずいけど超リアルで楽しかった。(自分は今教習所通い中なので車は運転したことあるよ(上手い下手は置いておいてね)。) まずPS5のとんでもないグラフィックとサウンドは言うまでもなかろう。それにど迫力のカーレーシングが映るのである。それはもう凄すぎてびっくりしてしまった。特に家では先にPS4のSPORTをやっていた(こっちもすごいクオリティではある)ので、その差に腰を抜かす。レーシングカーってこんなすげぇんだってただただ感心する。皆さんもぜひ一度はプレイしてみてはどうだろうか。

そんな「グランツーリスモ」をまんま題材とした映画が公開された。日産、SONY、プレイステーション、ポリフォニー全面協力の元、SONYコロンビアが製作した本作は、実際に2008年に始まったプロジェクト、グランツーリスモアカデミーを題材に実話に基づいた作品となっている。これは、ゲーム「グランツーリスモ」の世界的なトッププレイヤーを、本物のプロフェッショナルレースドライバーにしようというプロジェクト。実際に国際的なトッププレイヤーを輩出しており、数多くの世界大会で実績を残しているそう。本映画『グランツーリスモ』は、そのプロジェクトの始まりと現トッププレイヤー ヤン・マーデンボローの活躍を描いたお話。実際にヤンは今も活躍しているレースドライバーであり、その前はグランツーリスモのトッププレイヤーだった。彼は本作でも製作総指揮を務めており、一部レーシングシーンはスタントもこなしたのだそう。チャッピー、第9地区のニール・ブロンカンプがメガホンをとり、アメリカン・スナイパーのジェイソン・ホール、ドリームプランやクリード3のザック・ベイリンが脚本を執筆した。ヤン役にはミッドサマーより若手のアーチー・マデクウェが起用。イギリス日産の人であり本プロジェクトの立役者ダニーをオーランド・ブルームが、元レーサーでありゲーマーたちを鬼のようにしごいて実際にレーサーに育て上げるジャックをデヴィッド・ハーバーが演じた。個人的には我らがデヴィッド・ハーバーとオーランド・ブルームを観に行く気持ちで行ったが、この2人のキャスティングの強さは何かとてつもないものを感じる。
ソニーコロンビアなので視覚効果の面を含め映像的な期待はやはり高い。また(自分はファンと名乗れるほどではないが)、ゲームのファン及びプレイヤーへの小ネタなどのサービスも楽しみにしていた。しかし、あくまでも実話に基づくお話だしただゲーマーを養成するストーリー(もちろん、実際のレーシング大会などはあるだろうが)なので、そんな面白い映画がつくれるのかなーくらいのテンションだった。とりあえず映像体験として五感を肥やす為に、車ブームの一家で観に行ってきた。IMAXで上映してため、せっかくならそれでということで。


おったまげた。腰を抜かすほどめちゃくちゃ激アツな映画じゃねえか。
まず、ビジュアル、グラフィック、サウンドなど映像的なクオリティの高さがとてつもなすぎる。冗談抜きで今まで観たことないほどアツすぎて臨場感ありすぎる映像美。他会社作品を挙げて恐縮だが、マーヴェリックと同じレベルの凄まじいパワーを目にした。やはり最近の映画のグラフィッククオリティは本当に凄いと思うし、今述べたマーヴェリックやM:I、ウェイオブウォーター、RRR、TENETなどはとんでもなかった。それと同レベルのクオリティなのだ。これがどれだけ凄いことなのかくらいすぐにわかるだろう。「グランツーリスモ」ゲーム、いやそれ以上のこの高すぎる臨場感。あれ?俺って実際にコックピットにいるんだっけ?二次元の映像を観てるわけじゃないよねこれ?と、本当に現実と見紛う体験を2時間させられる。この、とんでもない映像体験を言葉じゃなかなか伝え切れないのがもどかしいが、そのくらい本当に凄かった。だから是非ご鑑賞いただきたい(IMAX推奨)んです。尋常じゃないカット割で、スタジアム全体、車のアップ、コックピット内、ドライバーアップ、車の内部の諸機関、そして車をそのままチェイスする映像から固定でフレームインアウトが瞬時に起こる映像、ドライバーのPOV映像、ドローンによる引きの映像など、全編を通して撮り方の宝庫であり、全く飽きが来ない臨場感。自分のような素人じゃこの映像表現の多様さは微塵もわからないのが悔しいが、ただこんな素人でもこの2時間が他の映画とは一線を画していることくらいはわかる。個人的な好きポイントは(これは誰でも拍手だろうが)、ヤンがゲーミングチェアでゲームをプレイしているところに車のパーツがどんどん構成されていって最終的に実際のレーシングシーンに移るところ。この特殊効果はそれだけでアカデミー賞とれるでしょってレベルで凄すぎる。予告でもちらっと映っていてその時点で凄いなぁとは思っていたが、本編で観ると改めて感動した。
また、時折挿入される「グランツーリスモ」本ゲームオマージュも秀逸。ヤンの現順位を車の上に表示して、ライバルを追い抜いた時に順位がコロコロ変わるのは観ていてかなり爽快(これまたゲーム本編から抜いた時のSEを引用している)。ど迫力のレーシングシーンを敢えて静止させて「◯th Final Lap」などと定期的にみせてくれるのも面白い。200km/h以上の被写体が複数映りながらも静止するわけだからその瞬間はぶっれぶれなのだが、それで順位がセンターにドン!と映るのが面白い。本来ならノンストップでレーシングシーンを回し続けるべきなのに、それを敢えてフリーズさせるというアイデアは意外と画期的だなと感じる。もちろん技法としては珍しくないのかもしれないが、それでもこの手の映画でこんな表現が観れるのは楽しいし、厨二心をくすぶられるいい演出。また「グランツーリスモ」といえばコースどりのマーカー表示も特徴的だが、それもそのまま輸入してきている。ゲームの方を知らない人にとってはチープに見えちゃうんじゃないか?と父親と話はしたが、ただゲームを知る我々としてはこの演出はかなり粋だし、それが後々活きていくのも感動的。
そしてもちろん特筆すべきはやはりサウンド。レーシングカーのマジもんのエンジンやモーターの音、エンジンの熱が燃え上がる音、ドリフトでタイヤがすり減る音、風を切る音、降り注ぐ雨の音、隣の車が走る音、クラッシュの音と爆発音、ドライバーの息遣い、インカムによるコーチからの指示、実況ヘリのプロペラ音、実況の声、観客の歓声...IMAXなのでもちろん超高性能サラウンド。この過多すぎるサウンドの数々が、サウンド(音)ではなく身体全身に"振動"として伝わってくる。心は震えるわ体は震えるわで落ち着いていられない。カッコ良すぎて歓声をあげたくなって仕方がなかった。他の映画のレビューでも言った気がするけど、これがアメリカとかならウォー!って叫んでたよ。やっぱり音がいい映画って映画館での楽しみの一つだし、映画館じゃないと100は味わえないとしみじみ思う。これだから劇場体験はやめらんねえなぁ。

ストーリーよストーリー。こっちもマジで良すぎる。先述の圧倒的な映像表現だけでも凄いのに、感動的で胸熱すぎるストーリーがあるのが本作のとんでもないところ。しかもそれが実話というのにびっくりさせられる。事実は小説より奇なり、いや事実はゲームより奇なりなのだろうが、非現実的でありながらそれでも現実的なことの連続で、すげえ話だなと実感する。涙なしでは見れないあの悲劇も、感動的な人間ドラマも、激闘のレースもどれも現実のヤンに訪れた事実なのだと考えると空いた口が塞がらない。もちろん脚色はあるが、それでもそう考えると脚本が秀逸すぎるという結論に至る。
1番は登場人物たち。主人公ヤンの夢に向かう真っ直ぐな姿勢には強く背中を押された。自分は年齢的に近いのだが、ここまで夢に向かって身を削ってまで頑張り抜く姿はかっこいいなと尊敬する。周りからの期待、父親からの非難、ダーニーやジャックからの熱い信頼、ライバルとの確執、そして自分との闘い、全てを背負い、そして直には想像もつかないGを受けながらハンドルを握る。ヤンは凄いよ本当に。カッコ良すぎる。そして本作を観た人は誰もが言うと思うが、デヴィッド・ハーバーとオーランド・ブルームの良さよ。もはや役名ではなく演者名で言ってしまうほどだが、この2人が最高すぎてたまらない。2人ともヤンと同じく夢を追い続ける熱い人たちなのだ。ダーニーはこのプロジェクトの立役者。まずその行動力というのがすごい。だって彼がいなかったらこの感動的な話はないわけだし、ヤンだって自身の夢を叶えることはできなかったのだ。確かに大人、ビジネスマンとして商業、プロモーション的な面を気にしている節はあるが、でもそれが彼の役目であってそれはきっとヤンへの精一杯のサポートなのだとも感じる。このプロジェクトが失敗したら声を上げた彼は大失態という重すぎる責任を抱えながらも、それでも自分の夢とヤンやジャックを信じて正面から立ち向かう姿はかっこいいなと思う。そしてもちろんジャック。ジャックだよな。いやデヴィッド・ハーバーだよな。いやホッパーだよな。(クレジットの1番上に名前が出ていたのも納得笑) 最初は鬼すぎる教官でいやいや言いすぎでしょと感じる(ストレンジャーシングスファンの自分的にはこのキツさは正直慣れていたかもしれない笑)が、この厳しさは後に訳があることがわかる。そして最初こそ本当に毛嫌いしていたヤンだったが、そんな彼に希望を見出して厳しくも信頼し続けてとにかく鍛え上げる姿にはもう泣いちゃうよ。デヴィッド・ハーバーの根は優しい雰囲気が滲み出すぎてる。まじでいいお父さんだし、まじでいい教官。自分は昔レーサーだったという過去もあり、だからこその彼なりの指導は胸熱。ネタバレはなるべく避けるが、ヤンが悲劇を体験した後は超感動する。ああ今でも涙腺が...。ホッパーもそうだけど、ちょっと空回りなのに馬鹿みたいにかっこいいんよな。夢を追い続ける若い男でありながら、同じく夢を追い続けている若い男に期待と信頼をしてインカムの奥で全力でサポートする彼は超かっこいい。
今改めて、このストーリーと登場人物の配置や設定がすごすぎると実感する。こういったスポ魂ものは胸熱なものが多いがやはり王道路線になってしまう。本作もそれの例外ではないのだが、それでもこんなにも画期的な作品ができるのかと感心させられる。なんで本作がこんなにすごいよくできた映画なのか自分でもよくわかっていないが、それでも言葉にならないくらいすごい映画なのだと落ち着く。


一家全員満場一致の大絶賛。当の弟に関しては人生ベストになったという。弟と母は4DXで2回目行ったそう。4Dにはもってこいすぎる映画だろうなと感じるので、自分も気が向いたら行ってみようかな。にしてもIMAXというのもあったが、またまたとてつもない劇場体験をさせてもらえた。映画好きとしてはこれ以上嬉しいことはない。本作、他人へのおすすめが難しいのだが是非みんなに観てほしいなと思う。ストーリーも良すぎるし映画ってこんなに楽しくてこんなにすごいアクティビティなんだよって知ってほしい。あわよくばゲームの方もどうぞ。
改めて本当に凄い映画を観させてもらった。何回凄いって言うのボキャ貧がって自分でも思うけど、でも凄い映画なんだよ!一種の体験として記憶によく残る作品だったしまた劇場で観たい一作になった。劇場体験としてもう一度観たいし、キャストたちにまた会いたいし、ストーリーでの感動もまた味わいたい。

[字幕・IMAX]
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