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瞳をとじてのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.5
【ヴィクトル・エリセ、失われた時を求めて】
第76回カンヌ国際映画祭でヴィクトル・エリセ31年ぶりの長編新作がお披露目となった。数十年の沈黙を破っただけあって3時間近くある骨太なミステリーに仕上がっている。そんな最新作"Cerrar los ojos"が邦題『瞳をとじて』で2024/2/9(金)よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開が決まった。先日、試写にて一足早く鑑賞したので感想を書いていく。

寂れた村で男がふたりが語り合う、それは実は『別れのまなざし』という映画の一部であった。ここで主演を演じたフリオ・アレナスは失踪してしまう。それから22年後、当時の監督であったミゲルが行方を追う。それは失われた時を求めるような旅であった。前作短編『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』で廃墟となったリオ・ヴィゼラ紡績繊維工場と語りの交差で失われた時を求めたヴィクトル・エリセは、ここで得たインスピレーションを発展させるかのように語りとフィルムを手繰り寄せながら記憶と記憶の流れを紡ぐ。まるで小説家のように重厚な語りではあるが、映画としての力強いショットを静かに画へ焼き付けていく。ネットがなくなったサッカーゴールを陽光が差し込む様も美しいが、なんといっても運命の歯車が回り始めるように、タイトルへ向かっていくように収斂していく終盤の画が素晴らしい。まさしく巨匠の威厳のある作品であった。
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