U子

瞳をとじてのU子のレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.6
めっちゃ楽しみにしてた。
ビクトル・エリセ監督の31年ぶりの長編新作。
期待と不安入り混じり、鑑賞。
「私はアナよ」と今のアナ・トレントに言わせる
シーンがあった。ゾワゾワとした。
ミツバチのシーンと繋がっていた。

鑑賞して、正直なところは、ちょっと残念。
なんか、えらく饒舌になってしまってる。
こんなに説明たくさんしなくていいよと
思ってしまった。
想像させる余地がないぐらい。
普通にミステリーみたいな感じで。
あのテレビ番組とかいるかな?
長さは感じないし、飽きることもないけれど。
映画の中の映画「別れのまなざし」の方が
面白そうだった。家の撮り方、光の撮り方が
やはりとても美しい。


「ミツバチのささやき」でアナはスクリーンに映し出されたフランケンシュタインをじっとみる。
そして、瞳をとじる。アナは現実と映画の中の世界が区別がつかなくなる。
映画が現実の世界を変えてしまう。

「瞳をとじて」も、記憶をなくしたフリオに
ミゲルが映画を見せることで、
記憶を蘇えらせ、娘を思い出させようとする。
虚構の世界が現実を変える。
その結果は映画ではわからないが、
きっとフリオに何らかの変化を与えたことは
間違いない。
瞳をあけて映画をみるけれど、
映画は瞳を閉じた世界、わたしたちの心の中をも変化させ、それはまた現実世界へと反映される。

缶が何度も映画の中にでてくる。
フィルムの缶、ミゲルの息子の思い出の缶、
フリオの思い出の缶。
缶は思い出の品物を風化させず、
時を超えてくれる。
ラストも過去の作品である映画のフィルムの
缶がトラックで到着する。
ここは、「ミツバチのささやき」の冒頭シーンにも繋がる。

古びた映画館でフィルムで上映される。
「別れのまなざし」
ミゲルはフリオやアナなどの観客の座る位置を指示する。
チェスも大事な要素だったが、
チェスのように人間を動かす。
それはまさに映画監督の仕事そのもの。
アナの横にフリオが座る。
ふたりはスクリーンをみつめる。

ミツバチのささやきや、エルスールのように
秘密をそっと覗き見してしまったような
そんな感覚はこの映画にはなかったけれど、
エリセはどこまでも映画の魔法を
信じてるということは伝わってきた。

この作品の中ではマックスが一番良かった。
三段峡ホテルのマッチが気になる。
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