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ほつれるのmaoのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
4.0
不倫相手が交通事故で目の前で亡くなってしまう綿子。気持ちのぶつけどころがないまま、終わっている夫婦生活を継続し自分の気持ちと向き合っていく。

84分と短いのに終始重苦しく濃く、歪んだ線が徐々にほつれていく様をもう元には戻せないのを分かったまま見てなきゃいけないそんな作品だった。
加藤拓也監督の前作わたし達はおとな同様、緻密な台詞と構成には凄いの一言しか無い。無駄が一切ないスマートさは喧嘩のシーンでもそうで、絶妙に緊張する間合いなんだけど全部計算で作ってると思うとあまりにリアルで呼吸が浅くなる。旦那が問い詰める所なんて、正論なんだけど一言一言がまじでムカつくんだよね。笑 原因がこっちにあるとしても、旦那の口調だけで不倫に至るまでの過程が少し分かるというか。全然分かりたくもないんだけど同情してしまう。

主人公の綿子は、居心地が悪い夫婦関係の上に成り立っている不倫をどこか正当化して向き合おうとせず続けている。だが愛人が亡くなり自分の居場所が宙に浮いたような、どこにも心を落ち着かせる場所がない状態になっても現実と自分に向き合えない。逃げてもいつか向き合わなきゃいけないと分かってるからこそ、離婚しないのは甘えと弱さを感じる。でもそれが人間の浅はかな所だよね。
登場人物誰にも100%は共感できないのに、めちゃくちゃ分かってしまう部分もあるもどかしさがこの映画には常にあってとにかく息苦しい。
面白い!って言える映画ではないけど、去年の邦画で一番好き。
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