するとら

パラダイスの夕暮れのするとらのネタバレレビュー・内容・結末

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

アキカウリスマキの労働者三部作
ダメダメおじさんの恋愛模様を描いたヒューマンドラマ
ゴミ収集の運転手として働く主人公がレジの女性に恋をするという単純なストーリー展開
この監督の映画の特徴である無表情で寡黙な登場人物達による無駄のない演技で淡々と繰り広げられる人間ドラマがクセになる
決して派手でなく何処にでもいるような労働者のなんでもない日常や恋愛模様が親近感や共感を呼ぶ
そしてこの映画の肝である主人公のキャラクター性がなにより愛おしい
ヒロインのイロナ私を選んだ理由は?と聞いたときの主人公のセリフ

「俺には理由なんてない。 あるのはただ、この名前と、ゴミ集めの制服、 虫歯に病気の肝臓、慢性胃炎… いちいち理由をつけるぜいたくなんて、俺にはない」
作中でも分かるように主人公はおそらく恋愛経験はほとんどなし 自分に自信がなくそんな自分を選んでくれたイロナが好きだったので イロナを選んだというよりはイロナに選ばれたという感覚だっただろう

そんな主人公を決定的に好きになってしまうあのシーン
イロナとの初デート 大袈裟にスーツを着てキザに花まで用意
部屋にはイロナをおもちかえりしたことを想定してワインとフルーツをセットしているという気合いの入れ具合
まるでラブコメヒロインみたいな空振り具合にあの無表情というギャップがたまらない
惨敗してしまいヤケになるシーンでは胸が締め付けられるほど

そんな不器用な主人公を口には出さずとも全て理解してくれていた相棒の存在もこの映画には欠かせません

一方のイロナは都合良く主人公を利用し挙句には新しい職場の上司と交際を始める
しかしイロナが本当に好きだったのは高級ディナーにスマートに誘ってくれる上司よりも外でファストフードを食べさせてくるような不器用で気取らない一途な主人公だった

この映画を観たら主人公のダメダメ振りに愛着心が湧くこと間違いなしですね
この監督を最近知りましたがこれからたくさん観よう思います
するとら

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