パラダイスの夕暮れの作品情報・感想・評価

「パラダイスの夕暮れ」に投稿された感想・評価

Naoto

Naotoの感想・評価

4.0
ゴミ収集人とスーパーのレジ打ち係の恋の物語。

ゴミ収集人ニカンデルはほとんど空白の人生を生きている。
決められた時間ゴミをゴミ収集車に放り込んで、それが終われば適当に一杯呑んでまた次の日を迎える。
休日も特にやることがなく、ダラダラと退屈な時間を過ごしたらまた平日に戻る。
同僚と共に退屈な人生を変えようと試みるも、夢は霞のように実態のないもので掴むことなどできるものではない。

そんなニカンデルは偶然出会ったレジ打ち係のイロナに恋をする。

そのイロナもまた退屈な人生を悶々と過ごしている。
一年に3度もクビになり、一方的に理不尽を突きつけてくる労働という物にうんざりして、自分を否定しない何者かを求めているような状態のまま、寄る辺ない心に孤独を募らせる。

そんな社会から隔絶されてしまった2人が一緒にいるのはごく自然なことだ。
ニカンデルにしてみればイロナは人生を彩る花であり、イロナにしてみればニカンデルはありえないほど退屈でも、とりあえず受け入れてはくれる心の港のような存在。

その後普通に関係が悪化するが、
趣味趣向や仕事観、表面的なものの見方を通り越して、無意識領域で探し求めているものがドンピシャで合致している2人はまたふらりと元通りに。

人は心には絶対に嘘はつけない。
無意識に求めてしまうものはその人の本質の維持にとって絶対になくてはならないものだと言える。(悪い結果をもたらすものでない限り)
そして本質の維持は人間にとって唯一の善であり、善を行うことは幸福と呼べる。

ままならない社会に対して悪態をつくのではなく、出来うる限り心に嘘がない状態(本質的な状態)を保ち続けるのが労働者階級の人間にでき得る唯一の幸福への道だ。

古今和歌集にこんな歌がある。

"世の中に絶えて桜のなかりせば春の心は
のどけからまし"

桜がもうそろそろ咲くかなぁ、とか、
あぁもう桜が散ってしまう、などと美しい物に心乱されてしまう時間こそ幸福だ、と逆説的に歌っているわけだが、2人の恋はそのようなものだ。

船の行く先にはスモールポテトしか食べれないその日暮らしが待っているかもしれない。
もしかすると野垂れ死ぬかもしれない。
それでも、心に満開の桜が咲くかもしれない。

さまざまな可能性に迷いためらいながらも、本質を絶えず欲求し続ける。
めくるめく幸福な恋である。

世の中に絶えてポテトのなかりせば人の心はのどけからまし。
なか

なかの感想・評価

4.3
ゴミ収集人とスーパーのレジ店員との恋。
もうめちゃくちゃ良すぎて、とても好きな作品でした👍
.
最高!!!ふたりが幸せになってくれたのが自分のことのように嬉しい。好きな恋愛映画聞かれたらこれ答えよう。そんで、またエストニア行ってる……
DVD鑑賞

マッティペロンパーをはじめとして、いつものメンツに嬉しくなったんだけど、カウリスマキの独特の作家性はこの長編第3作目にして完成されたらしい。

同僚の優しさがカウリスマキっぽくてたまらなく良いんだけど、自分の子どもの貯金箱を壊してマッティのためにお金を用意するシーンが好き。

LL教室やビンゴバー?など、独特で奇妙な面白スポットが随所に出てきて、そこも大好きなんだけどLL教室で「傷つけられても、短所があっても、愛していればすべてが楽しい。おかしなものだ、おかしくて楽しい、恋って…」という文章に出会い、そして、ヘッドフォンを置くと彼女のもとへ駆け出すシーンなんかロマンチックで最高。
m

mの感想・評価

4.5
「いちいち理屈をこねる贅沢など持たない」労働者のささやかな恋模様に職業や階級の序列の差が影を落とす。ゴミ収集者の男とスーパー店員の女が精一杯にめかし込んでホテルのレストランで食事をしようとしても入り口で門前払いをくらってしまうところがあまりにも悲しい。2人を応援する元無職の同僚がいいやつすぎて泣ける。淡々としているのに心暖まってめちゃくちゃ好き。
オフビートなラブストリーで、主役二人は常に無表情な演出。だからこその、ラストシーンには胸が打たれる。浜辺でラジオ聴きながらいきなり、、、のシーンも良かった。
もた

もたの感想・評価

-
高いレストランで「あいにく満席で…」って言われて中を覗くと、本当に満席っぽいのが憎いな。その後ブティックの店長と入った時にオウティネンが「この前は追い出された」と言うけど、なんとなくもやもやだけが残る感じ。
RanUeda

RanUedaの感想・評価

4.4
ゴミの清掃員とスーパーのレジ店員が恋に落ちる物語。登場人物の感情はドライに淡々と、しかし彼らの行動とシンプルな台詞で小気味良くストーリーが展開していく。カティもペロンパーも無表情で感情が読み取りにくい分、瞳に宿る強さが際立つ。一見すると行き当たりばったりだけど、その時々の自分の気持ちを正直に行動に移す2人には清々しさを感じた。乾いた質感の中に温かみと適度なドラマチックを内包した、とても心地よい作品。
leyla

leylaの感想・評価

4.1
「カラマリ・ユニオン」と2本同時収録。
この時代、カウリスマキはほぼ1年ごとに1作品を撮ってるんですね。

カウリスマキの描く純愛物語。
乾いた会話のやりとり、すれ違う心。でもこの人の元に帰りたいと思い、惹かれあう男女。

ゴミ清掃車の運転手ニカンデルと
スーパーのレジ係イロナの恋。

乾いた心になっている二人の根底には、貧困がある。
 
「なぜ私といるの?」
「俺には理由はない。あるのはただ名前と、ゴミ集めの制服と虫歯に病気の肝臓、慢性胃炎。
いちいち理由をつける贅沢なんて俺にはない」
このセリフに彼の思いと背景が集約されているのかなと。

自分には何もないから好きな女性に積極的には踏み込めない。女性からしたら踏み込んで欲しかった。だからすれ違う。
でも次第に二人にはお互いを必要としていることに気づく。

特に大きなことは起きず、ニカンデルとイロナの日常が淡々と映しだされる。
その中で少しずつ育んでいく愛が優しくて心温まる。
貧しさの中で生きる喜びを見つけた2人。
2人は「スモールポテト」でも幸せだから、一緒にいればきっと未来は明るいと思えました。

ムダのない構成と脚本、センスのいい音楽とユーモア、マッティ&カティの個性。
カウリスマキ監督、20代でこのクオリティはさすがです!
カメオ出演の監督がすごいイケメンでした。
のんchan

のんchanの感想・評価

4.1
発表当時、ジム・ジャームッシュが「最も美しい映画のひとつ」と絶賛したそうです✨

今作は、アキ・カウリスマキ作品の常連2人、マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンが初めて共演した長編作の3作目で、2人が若い☺️

監督がまだ20代で、監督の世界観の原点となっている要素がギューッと詰まっていてまだ青いというか素直で観易い内容だった。
なんと〜、監督自身もホテルのフロント係として出演しています❗️痩せている😲


ニカンデル(マッティ・ペロンパー)はゴミ清掃車の運転手。LL教室で英語を習い、1人暮らしの平凡な男。
スーパーのレジ係イロナ(カティ・オウティネン)をデートに誘うが、一張羅でキメて、💐を用意したものの、デートに慣れていなく、つまらない空気になり大失敗。

ところが翌日、リストラされたイロナは彼を頼ってやってくる。一緒に暮らし始める2人だが...
それからすぐに高級ブティックに職を得たイロナは、ゴミ職人のニカンデルを疎んじるようになっていく。若いイケメン店長と出かける彼女を横目に精一杯強がるニカンデル😔

男と女のたわいもないゴタゴタを描いたメロドラマだけど、なんともいえない雰囲気が漂っており、胸がいっぱいになって絶対に癖になってしまう💓

台詞は少なめで、さっぱり意味の無い会話になるけど、ここぞと言う時にプッと吹き出してしまう🤣
例えばレストランでの会話
「…なぜ私といるの?」
「俺には理由なんてない。あるのはただ、この名前と、ゴミ集めの制服、虫歯に、病気の肝臓、慢性胃炎…いちいち理由をつける贅沢なんて、俺にはない」
「…ちょっと聞いてみただけよ」
「喋りすぎた」
「…冷えるわね」
「そうか…俺は感じない」😮🤭💦🤣

マッティさん、こんな言葉を発していながらゲキシブなんです😂

ラスト、2人が船で旅立つときに流れる曲が、フィンランドのムード歌謡♬
毎作、ラストの音楽が監督の好みを入れてくるけどマッチしますね♪

ゴミのトラックで港へ向かう。待っているのはその日暮らしかもしれない。それでも2人は美しい世界目指して進んでみる✨


今作こそ、カウリスマキ入門にピッタリなのではないかな?✨
>|