すみ

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をしたのすみのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

フィルマークス試写会にて。
トークショーつき。
脚本の坪田文さんと監督の穐山茉由さんが好きで応募したので、お二人の世界観にどっぷりと浸かることができて幸せだった。
モノローグが多めだったんだけど、言葉選びや表現がすごく好きだったなあ。

親でも友達でも恋人でもない、自分にとって近くない、自分を知らない、そんな人の言葉だからこそ、身体にすっと入ってくることってあるよね。

アラサーって、自分の人生を考えなきゃいけない瞬間がこれでもかというほど訪れる。
これまでの人生の答え合わせが始まるような感覚になって、間違ってないか不安になって、まだ何者にもなれていない自分に焦ってしまう。だから、自分で自分を守るために幸せだという暗示をかける。
私は周りの人とは違うんだというちっぽけなプライドに囚われて、でもそんなことはないって自覚させられて辛くなる。
人間一人で生きていくことはできないのに、自立しなければと躍起になって、できなくて、そんな自分が情けなくて惨めで辛くなる。
等身大の感情がこれでもかとスクリーンに広がっていて、どれも身に覚えがあったし、見ていて辛くなって、でも同じくらい一生懸命生きている安希子が愛おしくなった。
だから、理想・仮初の自分にしがみつくのではなくて、ありのままの自分をしっかりと愛せるようになったラストには救われた。

止まっているように見えたささぽんのピアノは確かに上達していて、早口にならなくても飾らなくてもまいにちはゆっくりと進んでる。安希子がささぽんとの生活で気がつけたのは、自分自身の愛し方だったんだろうなあ。
お話は安希子視点で進むのでささぽんの過去や感情は最低限で、それがシンプルでよかったなあ。

イラスト、テロップ、ファッションや小物の使われ方や変化がわかりやすくてお洒落で素敵だった。

あとは、友情の描かれ方が優しく美しかったのが印象的で、タイムリーに試写会で友人とばったり会えたのが嬉しくて、すごく幸せだなあと感じた。
すみ

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