鶏

哀れなるものたちの鶏のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.4
『不気味だけど綺麗な映像とエマ・ストーン』

女性版のフランケンシュタインという感じのお話でした。エマ・ストーン演じる主人公ベラ・バクスターは、外科医であるゴドウィン・バクスターの手で胎児の脳の移植を受けて”生まれ変わり”、そのままゴドウィンに育てられる訳ですが、ゴドウィン自身も父親から様々な人体実験を受けていて見た目はまさにフランケンシュタイン。そんなゴドウィン=フランケンシュタインが生み出したのがベラなので、まさに女性版フランケンシュタインでした。

メアリー・シェリーの小説に出て来るフランケンシュタイン同様、ベラが色々なことを学ぶことで名実ともに大人になっていく成長物語と言えば聞こえはいいですが、中盤からベラが放蕩者の弁護士であるダンカンとともに家を出て海外を旅するようになり、さらには生活の糧を得るために娼婦になるに至ってはセックスシーンの連続で、R18+指定もむべなるかなという展開に。ただ胎児から母体への脳移植というショッキングな前提だけでなく、ゴドウィンらによる解剖シーンも多々出て来るので、セクシーというよりうすら寒い不気味さを絶えず感じる作品でした。

ベラが娼婦になることを通じて社会性を身に着け、自我を形成していくというストーリーは(勿論ベラの成長過程には、貧しい者に対する慈愛を育む場面があるなど、他の要素も多々ありましたが)、個人的にあまりピンと来ませんでした。ただ19世紀っぽい雰囲気の中にもSFチックで幻想的な雰囲気の映像は非常に素晴らしく、また緩急を付けた音楽もストーリーや映像にピッタリとマッチしていました。

勿論女性版フランケンシュタインを演じたエマ・ストーンの演技は素晴らしく、表面的に狂気じみていた前半から、様々な経験を通じて知性を身に着け、内面的な美しさを得て行くベラの成長を、実に上手く演じていたと思います。

そんな訳で、今年のアカデミー賞でも有力候補である本作の評価は、★4.4とします。
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